👩 妻のひとこと
数ヶ月待っていた第一候補——公園前の土地が、ある日とつぜん売りに出されました。気づいたのは、平日の昼間、仕事中の夫です。夫はその日、会議の合間をぬって、何度もB社の担当者と連絡を取り合いました。けれど、聞いていた話とは違うことが、ひとつずつ増えていきます。そのなかで夫は、ひとつの「抜け道」を思いつきます。それを使ったのかどうか、公園前の土地をどうしたのか——その夜に夫婦で決めたことまでを書きます。
📖 前回までのあらすじ
第26話で、数ヶ月待っていたB社の第一候補——駅から近く、公園を望める土地——について、売り主がついに「売る」と決めたと書きました。ただ、売り主はB社ではない 別の業者 に依頼し、建物を壊して更地にしてから分筆する予定。東西か南北かも、土地がどこにあるかも教えてもらえず、伝えられたのは 「一般公開の前なら購入希望を出せる」 ということだけでした。(第27話では、土地探しの途中で擁壁について調べたことを、別にまとめています。)
今回は、その第一候補が、ほんとうに売り出された日のことです。動いたのは、平日の、夫の仕事のあいだ。ここから書くやりとりのほとんどは、その夜、私が帰宅してから夫に聞いた話です。
ランディに、公園前の土地が出ていた
その日の昼、外出先にいた私に、夫から電話がかかってきました。
用件はそれだけで、電話はすぐに切れました。 公園前の土地 ——数ヶ月のあいだ、私たちが連絡を待ち続けてきた、第一候補のことです。駅から近く、公園を望める、あの土地。それが、ついに動きました。
夫がこの電話をかけるまでの経緯は、その夜、帰宅してから聞きました。夫はその日、仕事の合間にスマートフォンでランディ(土地探しのアプリ)を開いたそうです。新しく出た土地を上から見ていく、いつもの習慣で、その手が一件で止まった。——待ち続けていた、あの第一候補の土地でした。
ただ、画面に出ていた条件は、聞いていた話と違っていました。B社からは、あの土地は 分筆されて50坪ほどの区画になるはず だ、と伝えられていたのです。けれど実際に売りに出ていたのは、 分筆されないまま、約100坪 。価格も、見込んでいたより少し高いものでした。
- 面積:約100坪(分筆されず、そのまま売り出し)
- 立地:駅から近い/公園を望める
- 引き渡し:売り主が建物を取り壊し、更地で引き渡す(その後、擁壁の再築が必要)
- 価格:見込んでいたより、やや高い
- 事前情報との差:B社からは「分筆して50坪ほど」と聞いていた
その土地は、売り主が建物を取り壊し、更地にして引き渡すことになっていました。ただ、 その取り壊しのあとに、擁壁を造り直す必要 があります(擁壁のことは 第27話 に書きました)。土地そのものの価格に、擁壁の再築費用が乗る。それらを足すと、約100坪のこの土地は、 わが家の予算を、少し超えていました 。
数ヶ月待った土地が、ようやく動いた。けれど、出てきたのはわが家の予算を少し超える土地で、しかも分筆もされていません。夫がB社に連絡を取りはじめたのは、この電話を切ったすぐあとのことでした。
担当者は休み——会議の合間に動く
夫は、会議が始まる前に、まずB社に電話をかけました。この数ヶ月、ずっと間に立ってくれていた担当者に、状況を確かめたかったからです。
けれど、担当者はその日、休みでした。電話に出たB社の方は「担当者の携帯におかけいただいてかまいません」と言ってくれて、夫は教わった番号にかけ直しました。今度は、 つながりませんでした 。
会議の時間が迫っていました。夫は電話をあきらめて、担当者にメールを送りました。公園前の土地が売りに出ていること。そして——「今後、どう動けばよいか、アドバイスをいただけませんか」。それだけ書いて、夫は会議に入りました。
会議のあいだに、担当者から返信が届いていたそうです。
担当
休みの日に、買い手のためにここまで動いてくれた ——そのことを、夫は後になって「ありがたかった」と言っていました。
確定測量に4ヶ月——「待つのは難しいと思います」
会議が終わって、夫は担当者に電話をかけました。売り主側の仲介業者に問い合わせた結果を、こう説明してくれたそうです。
売り主側は、これから 確定測量 をするところだ。だから、土地をどう分筆するかは、まだ何も決まっていない。そして——
担当
数ヶ月待った土地が、ようやく動いた。そう思った矢先に、 「ここからさらに、確定測量に4ヶ月」 と言われたことになります。
確定測量は、土地の境界を、 隣り合うすべての土地の所有者 と、 道路・水路などを管理する行政 の立会いのもとで確定させる測量です。土地を分筆して登記するには、原則としてこの境界の確定が前提になります。時間がかかるのは、隣地所有者全員と立会いの日程を調整し、道路などとの境界(官民境界)については行政との協議を経る必要があるためで、地域や条件によっては数ヶ月かかることもあります。売り主が「これから確定測量」という段階の土地では、 分筆の区割りが決まるのは、さらにその先 になります。
分筆を待つというのは、まず確定測量の4ヶ月を待ち、そのうえで、分筆の話し合いを待つ、ということ。担当者の「難しいのではないか」は、売り込みでも引き止めでもなく、 買い手であるわが家の側に立った、率直な見立て でした。
順番を、組み替えられないか
夫は、その場で引き下がりませんでした。担当者に、こう持ちかけたそうです。
測量と登記はあとから進めるとして、契約だけ先に交わせないか。待つ時間をただ過ごすのではなく、 こちらから順番を組み替えられないか 、という問いでした。
分筆がまだ済んでいない土地でも、買い主と売り主のあいだで 分筆の区割り(位置・面積)を先に合意 し、 分筆の完了を条件とした売買契約を先に結ぶ 、という進め方は実務上あります。契約を先に交わし、確定測量と分筆登記は引き渡しまでに済ませる形です。ただし、これは 売り主側がその区割りに合意し、その進め方に応じることが前提 です。売り主が分筆の方法を決めていない、あるいは買い手と詰める意思がない場合には、この手は使えません。
担当者の答えは、半分はイエスでした。
担当
「それは囲い込みですよ」
「いぶかしげな対応」。その言葉が、夫には引っかかったようです。担当者に、まっすぐ聞きました。
担当
売り主と買い主の両方から手数料を受け取る 「両手取引」 のことは、 第26話 でも書きました。売り主側の業者が、自分の手元で買い手を見つけて取引を完結させたい——その誘惑が働きうる構造です。担当者の「そうかもしれない」は、 その構造を、否定しない答え でした。
夫は、もう一歩、踏み込みました。
電話の向こうの担当者は、少し間を置いて、答えたそうです。
担当
担当者の声は、それまでより硬かったそうです。 気分を害したような ——夫は、そういう言い方をしていました。
できる、けれど、やらない——公園前を諦める
夫は、電話のあとで、自分の考えを整理したそうです。
囲い込みが法律で問われるのは、 不動産業者の側 であって、消費者がどの業者に連絡を取るかは——理屈のうえでは——買い手であるわが家には関係のないことのはずだ。直接連絡を取ること自体は、 できる 。
できる。しかも、それは机上の空論ではありませんでした。担当者自身が「対応が変わる可能性は否定しません」と言っています。直接動けば、数ヶ月待った公園前の土地に、もう一度手が届くかもしれない。逆に、ここで引けば、本命を手放して、土地探しはほぼ最初からやり直しになる。 抜け道は、たしかに目の前にあった のです。
けれど、夫はそうしませんでした。担当者に、踏み込みすぎた失礼な問いをぶつけてしまった、という思いがありました。それに、両手のために売り手を囲い込む——その構造に、 買い手の側から乗っていくようなやり方は、自分としてもしたくない 。「できる」と「やる」は、別のことでした。
夫は、担当者に伝えました。
担当者は、その判断を、引き止めはしませんでした。むしろ、こう言ってくれたそうです。
担当
夫は、いまの手持ちを、正直に話しました。
数ヶ月、間に立ってくれた担当者との関係は、切れずに残りました。失礼な問いをぶつけたあとでも、次の土地の紹介を引き受けてくれた——それが、その電話の最後でした。
帰宅して、食卓で——「期待するのは、やめよう」
私がこの一日の顛末を知ったのは、帰宅してからです。夫が、朝からのことを、順番に話してくれました。ランディで見つけたこと、担当者が休みだったこと、確定測量の4ヶ月、囲い込みのこと、そして公園前を諦めたこと。
全部を聞いて、私は夫に聞きました。
夫の答えは、迷いのないものでした。
実際、その少し前から、 ホルムズ海峡をめぐる中東情勢を背景にした原油高 で、住宅に使う断熱材や配管の値上げが伝えられていました。待つ時間は、ただ過ぎていくだけではなく、 家を建てるための費用を、少しずつ押し上げていく 。夫が言いたかったのは、たぶん、そういうことでした。
私は、もう一度聞きました。
神社前の土地。以前に一度、「少し狭いかもしれない」と、二人で踏み切れなかった、あの土地です。さっき夫が担当者に「決め手に欠ける」と話した、 3番目の土地 。
数ヶ月待った第一候補を見送って、私たちが次に向かうのは、 一度は見送りかけた土地 でした。振り出しに戻ったようにも見えます。でも、今度は二人で、もう一度、同じ土地に立ってみる。前に見たときとは、少し違う目で見られるかもしれない。そう思いながら、私はその夜、夫の「見に行こうか」に、うなずきました。
📝 まとめ
- 数ヶ月待った第一候補(公園前の土地)が、ランディで売り出されているのを夫が発見。聞いていた「分筆して50坪ほど」とは違い、 未分筆の約100坪 。売り主が更地にして引き渡す土地だが、取り壊し後に擁壁の再築費用が乗り、価格は予算を少し超えていた
- 夫は会議の合間にB社へ連絡。担当者は休みだったが、メールですぐ動いてくれた
- 売り主側はこれから確定測量(このエリアで約4ヶ月)。その後に分筆を検討では、待つのは現実的に難しい、との見立て
- 夫は「確定測量の前に分筆方法を決め、売買契約を先に結ぶ」進め方を提案。それ自体は可能だが、売り主側はいぶかしげで、応じる雰囲気はなかった
- 直接、売り主側の業者に連絡すれば対応が変わる可能性はある。ただしそれは囲い込みの構造に乗ること。夫は 「できるが、やらない」 と判断し、公園前の土地を諦めた
- 数ヶ月間に立ってくれた担当者との関係は切れず、引き続き土地の紹介を依頼した
- 帰宅後、夫婦で確認したのは「コントロールできない不確実な話に期待するのは、もうやめよう」ということ。待つあいだに資材価格も上がっていた
- 次は、一度は見送りかけた神社前の土地(3番目の候補)を、もう一度二人で見に行くことにした
このブログについて
都市部で土地から注文住宅を建てる40代・4人家族の記録ブログです。賃貸10年の限界を感じた夫婦が、FP面談・住宅ローン事前審査・土地探しのリアルをそのまま書いています。同じように家づくりを考えている方のヒントになれば嬉しいです。
💬 よくある質問
- Q. 土地の分筆を前提に購入を考えるとき、確定測量が終わるまで待つ必要がありますか?
- A. 分筆して登記するには、原則として土地の境界が確定していることが前提になり、確定測量はそのために行われます。隣地所有者や道路管理者との立会い・協議が必要なため、地域や条件によっては数ヶ月かかることもあります。一方で、確定測量の完了を待ってから契約するのではなく、 分筆の区割りを売り主・買い主のあいだで先に合意したうえで、分筆の完了を条件とした売買契約を先に結ぶ 進め方も実務上は存在します。どちらになるかは売り主側の方針しだいなので、早い段階で確認しておくと、待ち時間の見通しが立てやすくなります。
- Q. 売り主側の仲介業者が買い手側の業者に冷たい場合、買い手が直接その業者に連絡すれば話は進みますか?
- A. 買い手が売り主側の仲介業者に直接つくと、その業者は売り主・買い主の双方から手数料を受け取れる(両手取引)ため、対応が変わる可能性はあります。ただし、それは売り主側が買い手側の業者の関与を避けたい状況(いわゆる囲い込み)に、買い手の側から乗る形にもなり得ます。これまで動いてくれた買い手側の仲介業者との関係を手放すことにもなります。買い手の希望を独立して代弁してもらいたい場合は、 買い主側に別の仲介業者を立てる(片手取引) のが基本的な対応策とされています。
- Q. 予算をわずかに超える土地で、「待てば値下がりするかもしれない」という見通しに期待してよいですか?
- A. 値下がりするかどうかは、売り主の判断や市況しだいで、買い手がコントロールできない要素です。待つあいだにも、ほかの候補地が売れたり、建築資材の価格が動いたりと、状況は変わっていきます。「下がるかもしれない」という不確実な見通しを前提に判断を先送りすると、結果として時間とコストの両方を失うことがあります。 確実に分かっている条件(価格・面積・造成や擁壁の必要性など)で予算に収まるかどうか を判断の基準にし、不確実な要素は判断材料に含めない、と切り分けると、決めやすくなります。
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