土地の候補を見に行くたびに「違う」と感じて帰ってくる日が続くと、「このまま見つかるのかな」という不安が頭をよぎりませんか。
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私たちも、5件を見て全部「違う」と感じた日の帰り道、妻が知人に教えてもらっていた地場の不動産業者に思い切って電話をかけました。
この記事では、閉店間際の事務所に飛び込んだ午後4時からの話と、「複数の業者を使うのは不義理か?」という疑問への、意外な答えをお伝えします。
この記事でわかること
- 5件全滅の午後4時、飛び込みで地場の不動産業者に電話した——すぐに来てよいと言われた話
- 「別の不動産業者がいる」と正直に伝えたら店長はどう反応した?「不義理じゃないですよ」の一言
- レインズがあるので「地場だから物件数が多い」わけではなかった——ただし学区や通勤事情など情報の質は違う
- 「商談中の土地がある——公園の前で、駅まで徒歩数分」——帰り道に寄った公園で、夜桜が咲いていた
40坪の土地に総二階を検討していた矢先、「売れました」のLINEが届きました。落ち込みながらも提案された5件の土地を夫婦で見て回りましたが、「ここに住みたい」と思える場所は1件もなく。5件目の現地で、妻が知人に教わった地場の不動産業者に電話をかけました。今回は、その事務所を訪ねた午後4時からの話です。
電話口の向こうで、少し間がありました。「今からですか?」と戸惑った声。誰かと相談しているのが聞こえて、それから「来ていただいて構いませんよ」と返ってきました。
午後4時。5件の土地を見て回った直後の、飛び込みに近い電話でした。知人から「このエリアで探すなら」と聞いていた地場の不動産業者。「いつか相談するかも」と思っていた「いつか」が、5件全滅した日の午後に来ました。
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登場人物:直感派の妻と、調べ始めたら止まらない自営業40代の夫。都市部で土地から注文住宅を建てる4人家族の記録です。連載のあらましは 第1話 からどうぞ。
ファイルの山と、若い店長
地場の不動産業者との出会いで知った「業者を複数使うのは不義理ではない」という業界の常識。業者選びの判断軸はまとめ記事で整理しています。
事務所に着いて、最初に目に入ったのはファイルの量でした。棚にぎっしりと並んだファイルが、この事務所が扱ってきた情報の厚みを物語っているようで、少しだけ期待が膨らみました。
大手のチェーン店のような雰囲気ではなく、どちらかというとアットホームな空間。その中で、対応してくれたのは店長さんでした。
店長といっても、私たちより一回りは若そうな方です。でも、座った瞬間の空気で、この人は話を聞いてくれる人だ、と感じました。構えるような雰囲気がなかったからだと思います。
全部、正直に話した
隠しても仕方がない、と思いました。
現在、ある工務店で建築を予定していること。その工務店から紹介された不動産業者に手伝ってもらいながら土地を探していること。ランディにも登録して、自分たちでも物件を調べていること。それでも、自分たちの予算では希望に合う土地がなかなか見つからないこと。
今の状況を、すべて素直に話しました。
他の業者に依頼していることを伝えれば、嫌な顔をされるかもしれない。でも、ここで取り繕っても意味がない。5件を回って疲れ果てた後だったからこそ、変に飾る余裕がなかったのかもしれません。
「そんな工務店いないので、大丈夫ですよ」
全部聞き終えた店長さんは、あっさりとした口調でこう言いました。
不動産業者を複数利用していただいて、全然構いませんよ。僕らのことは、このエリアの担当だと思ってもらえればいいので。
力みのない言葉でした。囲い込もうとする気配がない。「うちだけに任せてください」ではなく、「うちも使ってください」というスタンスに、少し驚きました。
そこで、ずっと胸の中にあったことを聞きました。
工務店から紹介していただいた不動産業者さんがいるのに、別の業者さんにもお願いしたら、工務店に対して不義理になりませんか?
私たちが心配していたのは、不動産業者同士の問題ではなく、お世話になっている工務店との関係でした。紹介してくれた業者を飛び越えて動くことが、工務店の顔を潰すのではないか——ずっとそこが引っかかっていたんです。
店長さんは、一瞬きょとんとした顔をして、こう答えました。
お客さんが別の不動産業者を使ったからって気にする工務店なんて、いないので。大丈夫ですよ。
力強い言葉、というのとは違います。むしろ、当たり前のことを当たり前に言っただけ、という軽さでした。でも、その軽さに救われました。朝から抱えていた重たいものが、すとんと落ちた感覚がありました。
5件を回っている間、ずっと頭の片隅にあったのは「動いていいのか」という遠慮でした。工務店の顔を潰すんじゃないか。紹介してもらった業者を飛び越えるのは失礼じゃないか。その遠慮が、何十年も住む家の土地探しにブレーキをかけていた。
店長さんの一言は、そのブレーキを外してくれました。
そしてこのとき、自分の中でひとつ決めたことがあります。これからは、遠慮を理由に動かないのはやめよう、と。工務店との関係は大事にする。でも、使える手段があるなら全部使う。誰かに悪いからと立ち止まるのではなく、自分たちの判断で動く。あの電話をかけたときの勢いを、一回きりにしたくないと思いました。
💡 不動産業者は複数利用しても問題ない
工務店紹介の不動産業者以外に、自分たちで別の業者に相談することは、業界的にはごく普通のことのようです。我が家は「工務店に不義理になるのでは」と遠慮していましたが、地場の業者の店長さんいわく「そんな工務店はいない」とのこと。土地探しは一生に一度の判断。遠慮で選択肢を狭めてしまうより、使える手段は全部使った方がいい——実感としてそう思いました。
「全然無理ということはないと思いますけどね」
店長さんは、希望条件を丁寧に聞いてくれました。エリア、予算、広さ。駅からの距離、そして「抜け感」。
予算を伝えたとき、店長さんがさらっと言いました。
予算としてはあるほうなので、全然無理ということはないと思いますけどね。
5件を回って「見つからないかもしれない」と沈みかけていた気持ちに、この一言は大きかった。根拠のない励ましではなく、このエリアの相場を日常的に扱っている人の肌感覚としての言葉。それが信頼できると思えたのは、ファイルの山と、地場で商売を続けている実績が目の前にあったからだと思います。
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地場の業者だから持ち得る「ものさし」
店長さんは、物件の話に入る前に、ひとつ正直なことを教えてくれました。
僕らのところにも、ネットに出る前のホットな情報が来ることはあります。ただ、不動産業者は仲介した物件をレインズに登録しなければならない義務がある。だから、ネットに載っていない物件というのは、実際にはそんなに多くないんです。
レインズ(REINS)とは、不動産流通機構のデータベースのこと。売却の仲介を受けた物件は、ここに登録しなければならない。つまり、どの業者に行っても、基本的に扱える物件は同じということです。
「うちにしか出せない物件がたくさんありますよ」と煽ることもできたはずなのに、仕組みから正直に説明してくれた。それだけで、この人の話は信用できると思いました。
そのうえで、店長さんはこのエリアの「地図」を教えてくれました。どの駅の周辺が人気なのか。どの学区に人が集まっているのか。この地域で土地を買う人が何を基準にしているのか。
どの情報も、地域に根ざした店舗でなければ持ち得ないものでした。ネットで検索しても出てこない。不動産ポータルサイトの条件検索では絞り込めない。長年このエリアで商売をしてきた人の頭の中だけある情報です。
前回の打ち合わせで、工務店紹介の不動産業者は現地を見ずに物件を紹介していました。地図とGoogleマップだけで「景色がいい」「抜け感がある」と説明していた。一方、この店長さんは、物件の話をする前に「エリアそのもの」を語ってくれた。土地を見る前に、土地を選ぶための「ものさし」をもらった感覚でした。
物件数は、期待したほど多くなかった
ただ、正直に書いておきたいことがあります。
店長さんに希望条件を伝えた後、いくつかの物件を提案してもらいました。費用、面積、抜け感——こちらの条件に合いそうな土地を、複数出してくれました。
でも、画面に表示された物件を見て、すぐに気づきました。どれも、ランディで見たことがある土地ばかりだったんです。
さっき店長さんが説明してくれたレインズの仕組みが、目の前で裏付けられた瞬間でした。どの業者に行っても出てくる物件は同じ。頭ではわかっていたつもりでしたが、実際に画面を見て「全部知ってる」と思ったときの落差は、想像以上でした。
地場の業者に行けば、魔法のように物件が増えるわけではない。
それが、この日わかったことのひとつです。期待が大きかった分、少しがっかりしました。
⚠️ レインズの仕組みと、「ネットに出ない物件」の実際
不動産業者が売却の仲介を受けた物件は、レインズ(REINS:不動産流通機構)への登録義務があります(専任媒介・専属専任媒介の場合)。一般媒介契約の場合は登録義務がないため、レインズに載らない物件も一部存在します。ただ、実際には一般媒介でも登録するケースが多く、「ネットに出ていない物件」が大量にあるわけではないようです。どの不動産業者に相談しても、基本的に紹介してもらえる物件は大きく変わりません。「地場の業者だから特別な物件をたくさん持っている」とは限らない——これは実際に訪ねてみて初めて実感したことでした。ただし、物件データは同じでも「エリアの知識」や「まだ市場に出ていない情報」には差があります。
「実は、商談中の土地があります」
私たちの表情が曇ったのが伝わったかもしれません。
店長さんが、少しだけ声のトーンを変えて、こう切り出しました。
実は、今ちょうど商談中の土地がありまして。プライバシーの観点から詳しいことはまだ申し上げられないんですが——公園の前で、駅まで徒歩数分です。
公園の前。駅まで徒歩数分。
それは、私たちがずっと探していた条件そのものでした。「駅近×抜け感」の両立。これまで何件の土地を見ても叶わなかった組み合わせが、言葉の上では目の前にある。
夫がすかさず聞きました。
公園の目の前なんですか?
目の前です。
住所は教えてもらえませんでした。擁壁の有無や詳しい条件もわかりません。店長さんとしても、まだ売り手側の仲介になっていないので、詳細をお伝えする段階ではないとのことでした。ただ、「関心があるのであれば、話が本決まりになればご紹介できます」と。
確約ではない。本決まりにならなければ、この話は消えてしまうかもしれない。それでも、5件を回って全滅した日に、こういう話が聞けたこと自体が、小さな光のように感じました。
帰り道、夜桜が咲いていた
事務所を出たときには、あたりはすっかり暗くなっていました。
帰り道、店長さんから聞いた「人気のあるエリア」のひとつを通りました。ある駅の近くです。どんな街なのか少しだけ見てみようと、夫が車の速度を落としました。
そのとき、窓の外に桜が見えました。沿道の公園に咲いた夜桜です。街灯に照らされた薄い花びらが、暗い空に浮かんでいました。
夫と私、どちらが先に言ったのか覚えていません。ほとんど同時だったかもしれない。
まだ住所も知らない。見てもいない。商談中で、手が届くかどうかもわからない。それなのに、夜桜を見ながら「ここがいい」と思っている自分たちがいました。
朝から5件を回って、どの土地でも「悪くないね」としか言えなかった夫婦が、まだ見ぬ場所に向かって「最高だよね」と笑っている。おかしな話です。でも、この日一日で一番素直な気持ちだった気がします。
土地探しを始めてから、帰り道はいつも静かでした。数字の重さに押しつぶされそうな日も、疲れて何も話せない日もあった。でもこの日の帰り道は、少しだけ違いました。
土地探しの全記録をまとめ記事で体系的に解説しています。業者の選び方・土地を見るポイント・失敗しない判断基準まで詳しく解説。
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- 不動産業者を複数利用するのは業界的に一般的。工務店に対して不義理にはならない
- 地場業者の強みは物件数ではなく、ネットでは拾えない学区・環境の「地場情報」
- レインズでデータは共通。業者ごとに変わるのは「土地を選ぶものさし」の質
📌 次にやるべきこと:土地探しで不動産業者とうまく付き合う方法を知りたい方はこちら。
👉 土地探しまとめ|3ヶ月かけて学んだ条件整理と業者選びのコツ
次回予告
次回は、妻が1人で不動産業者を回った日。100坪の土地と「もう一歩」の感触。夫なしで歩いてみて気づいたことがありました。
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💬 よくある質問
- Q. 不動産業者は飛び込みでも対応してくれる?
- A. 業者の規模や営業スタイルによります。地場の中小業者は飛び込みでも対応してくれることが多い一方、駅前の大手や完全予約制の小規模事務所では断られることもあります。担当者が外出中で対応できない時間帯もあるので、確実に話を聞きたいなら事前に電話でアポを取ってから訪ねる方が安心です。我が家は地場業者にアポなし電話で当日訪問して丁寧に対応してもらえましたが、運の要素もあったと感じています。
- Q. 地場業者と大手、どう使い分ける?
- A. 物件数は大手が多くても、地場の学区・環境情報は地場業者にしかありません。我が家は両方使い分けて、提案の幅を広げる方針にしました。土地探しまとめでも整理しています。
- Q. 不動産業者を複数使うのは不義理?
- A. 業界的には一般的な慣習で、不義理にはなりません。むしろ複数業者からの情報を比較すると、土地探しの精度が上がります。
地場の不動産業者に飛び込んだときの帰り道、夜桜がやたらきれいだったのを覚えています。
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