「最長で70代後半まで借りられます」——そう聞いたとき、夫は黙っていました。「借りられる年齢を知れてよかったけど、返せるかどうかはまた別の話だよな」と、帰ってから言っていました。工務店の紹介でFPに初めて相談した日の後半戦。「借りられる額」と「返せる額」が違うのだという感覚が、初めてリアルになった記録です。また、両親にまだ話していなかったことに気づかされた日でもありました。
前回のあらすじ
工務店の紹介で来たFPは、本当に中立なのか——そんな疑念を抱えながら、打ち合わせ室に入りました。
聞かれたのは年収だけではありませんでした。旅行の回数、子どもの進路、定年後の見通し——人生全体から逆算して「いくら家に使えるか」を考えるFPでした。「この工務店で建てましたか?」と夫が直接聞いたら「違います」と正直に答えてくれて、少し気持ちが楽になりました。
夫が「漆喰の壁と無垢の床がいい」とFPの前でさらりと口にしたとき、私は思わず袖を引っ張りました。今回は、面談で告げられた「70代後半まで借りる」という現実の後半です。
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- 「70代まで借りられますよ」——その一言を夫婦はどう受け止めたか
- 「借りられる額」と「返せる額」の違い——FPの説明で印象に残ったこと
- 「ご両親の援助は受けられそうですか」——面談中に気づいた、親とお金の話をしたことがないという事実
- FP相談を受ける前と後で、家づくりの判断軸がどう変わったか
住宅ローンについて体系的にまとめた記事はこちら → 住宅ローン 固定vs変動、自営業の住宅ローン選び体験談【2026年版】
👫 登場人物: 直感派の妻と、調べ始めたら止まらない自営業40代の夫。都市部で土地から注文住宅を建てる4人家族の記録です。連載のあらましは 第1話 からどうぞ。
「いくらの家を考えていますか」より先に知りたかったこと
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「70代まで借りられる」と言われた瞬間に、頭の中で何が動くか。FP相談2回分の全体像と「借りられる額」と「返せる額」のギャップは、まとめ記事で俯瞰できます。
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面談の中盤で、「今、どのくらいの予算規模を考えていますか」と聞かれました。
少し迷ってから、言いました。「予算より先に、無理なく返せる金額を知りたくて来たんです」と。完成見学会で3,500万円という数字を聞いてから、「どこまでなら現実的なのか」という感覚がずっとふわふわしていて、その答えが出ないまま今日まで来ていたからです。
さっきまで「無垢の床・漆喰にしたい」と舞い上がっていた夫を横目に、私はずっとそのことが頭にありました。好きな素材を語る前に、まず地に足をつけてほしい、と。
FPは「わかりました」と言って、話を先に進めました。大げさに肯定されるわけでもなく、たださらりと受け取ってくれた。それがかえって、ちゃんと聞いてもらえた感じがしました。
70代後半まで借りられる——その言葉の重さ
面談で一番頭に残ったのは、住宅ローンの返済期間の話です。
我が家は40代。「年齢が遅い分、何歳までローンが組めるのか」というのが、家づくりを考え始めたときからずっと心配の種でした。FPから返ってきた答えは、「多くの金融機関では完済時の年齢上限を『80歳未満(79歳)』としているので、40代前半から組めば最長70代後半まで借りられます」というものでした。完済時年齢の上限自体は職業によって変わりませんが、自営業の場合は収入の安定性や事業年数なども審査で考慮されるため、借入可能額や条件に影響することがあります。借入時の年齢と最長返済期間(多くは35年)の組み合わせで完済時期が決まる、という説明でした。
70代後半まで。
数字としては、思っていたより長かった。「借りられる」という意味では、選択肢がないわけじゃない。でも、その言葉を受け取りながら、頭の中でじわじわと別の問いが膨らんでいました。70代後半まで、返し続けられるのか。
夫は自営業です。定年がない分、長く働けるという面はあります。でも同時に、今と同じ収入が何十年も続く保証はどこにもない。今だって、家族のために無理をして働いてくれているのはわかっています。それが今後も同じ調子で続くとは、常識的に考えても、40代の70代と同じように働けるわけがない。体力も、仕事の量も、きっと変わっていく。「70代後半まで借りられる」は「70代後半まで安心して返せる」とは別の話だ——ということを、この場で改めて意識しました。
夫に後で聞いたら、同じことを考えていたそうです。
借りられる年齢を知れてよかったけど、返せるかどうかはまた別の話だよな。
いつもなら無謀なくらい前のめりになる夫が、ここでは冷静でした。お金のことに関しては、このくらいの慎重さがちょうどいいと思っています。
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「ご両親の援助は受けられそうですか」——その問いに、言葉が詰まった
面談の後半、FPからこんな質問がありました。
ご両親は家づくりに反対していませんか。援助を受けられそうですか?
さらっと聞かれた質問でしたが、私は少しの間、答えが出てきませんでした。隣の夫を見ると、かすかに表情が固まっていました。
反対はしていないと思います。でも、きちんと話し合ったことが、一度もなかった。家を建てようと決めてから、見学会に行って、FPの予約を入れて——それなりに動いてきたのに、両親にはまだちゃんと話していない。漠然と「報告はそのうち」と思っていたのだと思います。
夫にとっては、もう少し複雑な事情もあります。夫は子どもの頃から、親にあれこれ口を出されながら育ってきた人です。型にはめられることへの反発が、ずっとどこかにある。だから、大きな決断ほど「親には事後報告でいい」という気持ちが働きやすい。それは私も薄々感じていたことです。「親に言ったら何か言われる」——その予感が、先送りにさせていたのかもしれません。
援助の話になると、さらに難しい。お金のことを親に切り出すのは、離れて暮らしているぶん、なおさら言いづらい。顔を見て話せない距離感というのは、こういうときにじわりと効いてきます。
一方で、自分たちで決めたい、という気持ちも正直あります。 親の援助を受ければ、多少なりとも「意見を聞かなきゃ」という気持ちが生まれるかもしれない。家づくりは何十年もの話だから、夫婦2人で納得して進めたい。それが本音です。
FPはそういう気持ちを否定せず、こう教えてくれました。
援助を受けるかどうかはご夫婦で決めることですが、もし受ける場合は贈与税の非課税枠が使える制度もあるので、事前に確認しておくと選択肢が広がります。
住宅取得のための親からの資金援助には、一定の条件を満たすと贈与税がかからない枠があるそうです。なお、この制度の非課税枠の金額・適用期限・要件は法改正により変わりますので、最新情報は国税庁の公式サイトでご確認ください。我が家がそれを使うかどうかはまだ何も決めていませんが、「知っておくのと知らないのでは違う」という話でした。
帰ってから夫に「両親に話しかけたこと、気づいてた?」と聞いたら、少し間があってから「そうだよね」と言っていました。「いつ話そうか」と聞いたら、「……今度会ったときに」と返ってきました。いつになるかわからない、ぼんやりとした答えでした。でも、それが夫の精一杯だということは、隣で見ていてわかりました。私は「そうだね」とだけ言って、それ以上は押しませんでした。親にいつ切り出すか、ずっと測っていたような間でした。
答えはまだ出ていません。でも、FPに聞かれるまで気づかなかったことが、この面談に来た一番の収穫だったかもしれない——帰り道、そんなことをぼんやりと考えていました。
面談を終えて——「返せる生活」を考えた2時間
帰り道、夫は「数字の話というより、人生の話をしてもらった感じだな」と言いました。私もそう思いました。
家づくりを考えると、どうしても「いくらの家が建てられるか」に意識が向きます。でも今日の面談で気づいたのは、本当に考えるべきは「どんな暮らしを続けていきたいか、そのためにお金をどう配分するか」だということ。家はその一部に過ぎないのだ、と。
ちなみに、「無理なく返せる金額」の具体的なシミュレーションは、この日はまだ出ませんでした。まずは我が家の収支と将来の見通しをFPに把握してもらう回、という位置づけで、次回の面談でシミュレーション表を見せてもらう予定になっています。数字の話は次回にしっかり書きます。
同時に、70代後半まで返し続けることへの不安も、両親とまだ話し合えていないことへの宿題も、ちゃんと残りました。面談が終わったからといって、すっきり解決したわけではない。むしろ、考えなければいけないことの輪郭がはっきりしてきた、という感じです。
それでも、「とりあえず話を聞いてみよう」と行った場所で、ここまで丁寧に向き合ってもらえたことは、素直によかったと思っています。工務店の紹介だからと身構えていた自分が、少し恥ずかしくなりました——でも、身構えるくらいの慎重さは、これだけの買い物には必要だったとも思っています。
面談が終わって外に出たとき、私はひとつ、自分の中で整理できたことがありました。「不安がある」と「進んではいけない」は、別のことだということです。お金の不安は消えない。でも、不安を抱えたまま前に進む覚悟が、この日少し固まった気がしました。夫は帰り道にもノートを広げていましたが、私はただ窓の外を見ながら、「よし」と静かに思っていました。
- 「借りられる額」ではなく「返せる生活」を基点に話してもらえた。住宅ローンの話を”家計全体の中の一項目”として整理してもらえるのが、FP相談ならではだと感じた
- 気になることは、その場で正直に聞いてよかった。「この工務店で建てましたか」という少し踏み込んだ質問にも、素直に答えてもらえた
- 任意ならば年収などのアンケートは答えなくてもよかったが、正直に話したことで的外れのない提案をしてもらえた
- 「両親への相談」「住宅ローン減税」「贈与税の非課税枠」——知らなかった論点を教えてもらえた。調べればわかることでも、「自分たちの話」として整理してもらえる点が違った
FP相談で学んだことをまとめ記事で体系的に解説しています。 資金計画の立て方・FPの選び方・相談前の準備まで詳しく解説。
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次に読むべき記事
次回予告
次回は、テーブルに2枚のA4が並べられた日。総予算9,000万円と7,000万——月7万円の差を、夫婦で受け取った話です。
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この話のポイント
- 「70代後半まで借りられる」は「返し続けられる」とは別の話——自営業40代が受け取った言葉の重さ
- 「ご両親の援助は?」という問いで気づいた、親とお金の話をしたことがないという事実
- FPは答えをくれる人ではなく、自分たちで考えるための数字を並べてくれる人だった
📌 次にやるべきこと: FP面談の体験談と準備のコツをまとめました。
👉 FP相談まとめ|家づくり初心者が学んだ資金計画と相談のコツ
筆者より一言
「70代まで借りられる」という言葉の重さを、長期ローンを前提に改めて受け止めた回です。
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📚 シリーズ別まとめ記事(ピラーページ)
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💬 よくある質問
- Q. 70代後半まで住宅ローンって本当に組めるの?
- A. フラット35は完済時年齢80歳までという条件があります(最長35年は申込時44歳まで)。民間ローンは銀行ごとに完済時年齢の上限が定められており、多くは80歳ですが75歳の銀行もあります。組めることと無理なく返せることは別問題で、我が家もこの言葉の重さに考え込みました。
- Q. 親からの援助は受けるべき?
- A. 「住宅取得等資金贈与の非課税特例」を使えば、一定額まで贈与税がかからずに援助を受けられます(時限措置のため最新の国税庁情報を必ず確認してください)。ただし制度の利用可否と家族関係のバランスは別問題で、事前に夫婦で話しておくと面談がスムーズです。
- Q. 「借りられる額」と「返せる額」の差はどう見極める?
- A. 銀行の事前審査は、年収・既存借入・勤続年数・信用情報などをもとに、返済負担率(年収に対する年間返済額の割合、多くの銀行で30〜35%が上限)と審査金利(変動金利でも審査上は3〜4%程度で計算するストレステスト)から「借りられる額」を算出します。一方FPシミュレーションは、教育費・老後資金・生活費まで加味して「無理なく返せる額」を可視化するもので、両者の目的が違います。両方の差を比較した記録は住宅ローンまとめに整理しています。






