👩 妻のひとこと
担当者が気にかけて教えてくれた土地を、正直に「見送り」と伝えた一日でした。素人の感想を伝えていいのか迷ったけれど、「こっちも真剣だから、はっきり言おう」という夫の言葉に背中を押されました。スーパーでレジを打ってもらっている間も、駐車場に向かう間も、夫はずっとスマホでハザードマップを見ていました。迷惑だなと思いながら、なんだか安心しました。真剣な人の隣で、一緒に迷っている。それが今の私たちの家づくりです。
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第22話売れていた
ある朝、スマホを開くと、見慣れた物件のページが「売却済み」に変わっていました。
以前、一度現地へ見に行ったことのある土地です。わが家の予算より大幅に高く、見に行った時点ですでに「買えない」とわかっていた。それでも気になって、ときどき確認していました。
誰かに報告するでもなく、しばらく画面を見つめていました。いい土地は、迷っている間に誰かが買っていく。そのことを、改めて実感しました。
B社の担当者から「売主のご兄弟でまだ方向性を悩まれているようで、いましばらくお待ちください」という連絡が届いたのは、もう数週間前のことです。概ね2〜3週間でお返事をもらえる、とのことでしたが、連絡は、まだ来ていません。土地探しを本格的に始めてから、もうすぐ4ヶ月になろうとしています。毎日スマホでSUUMOやランディを開く習慣だけが、変わらないまま続いています。
工務店の担当者から、メッセージが届いた
そんな日々の中、工務店の担当者から連絡が届きました。
「面白そうな土地があったので共有させていただきます。30坪と少しの平坦地で、道路沿いに近くの神社の森が見える立地です。予算内に収まるかと思います。」
内容を読んで、まず思ったのは「気にかけてくれているんだ」ということでした。不動産会社ではなく、工務店の担当者が、自分から土地情報を探して送ってくれた。それだけで、すこし気持ちが軽くなりました。
ただ——正直に言えば、戸惑いもありました。提案されたのは、30坪と少しの土地でした。以前、40坪の土地を「狭いかもしれない」と担当者の前で悩んでいたことがあります。私たちが探している土地のサイズも、それより大きいと伝えていたはずです。
夫に話してみると、「俺もそう思った」という答えが返ってきました。嬉しさと戸惑いが、同時にある。あるいは——担当者もわかったうえで、予算の現実として提案してくれているのかもしれない、とも思いました。それはそれで、また別のモヤモヤがあります。
土曜日、2件の土地を見に行く
1件目——直前にネットに出た、44坪の角地
その週の土曜日、夫と2人で出かけました。最初に見に行ったのは、数日前にネットでたまたま見つけた物件です。もともと一軒の建物が建っていたところを分筆して売り出しているようでした。
- 敷地面積:44坪(角地)
- 方角:北東の角地
- 道路との高低差:約1m強(売り出しにあたり新設された擁壁あり)
- 価格:予算内
- 子どもの学区:変わらない
- 通勤:普段使う路線の駅まで徒歩20分 / 別路線の駅まで徒歩13分
現地に着いて、土地の周りをぐるりと歩いてみました。角地なので空が2方向に開いていて、立ったとき思ったより広く感じました。道路との高低差は1メートル少し。売り出すにあたって新たに擁壁が作られており、見た限りでは綺麗な仕上がりでした。北東の角地なので劇的に日当たりがいいわけではありませんが、道路側への抜け感があります。隣に建物が建っても、圧迫感が出にくい。
夫は現地に着いてすぐ、スマホのアプリを開いて境界の位置を確認し始めました。「ここからここまでが敷地か」「この境界線はここかな」と、ひとりで静かに確認しています。以前の土地見学では「うーん」「どうかな」と言いながら車に戻ることが多かったのと、少し違う空気でした。
帰り道の車の中で、夫が言いました。
「駅まで徒歩20分か。健康のために、むしろよいかもしれない」
いつもは条件の”弱点”を確認したところで終わるのに、今日は弱点を自分なりに言い換えてみている。ちなみに、徒歩20分というのは通勤に使う路線の話で、別の路線の駅なら徒歩13分圏内にあります。「普段使わない駅でも、徒歩15分以内に駅があると気分が違う」とも言っていました。確かにそうかもしれません。
2件目——担当者が勧めてくれた土地
続いて、工務店の担当者が紹介してくれた土地へ向かいました。正直に言えば、メッセージを読んだ時点から、「ないかな」という気持ちがどこかにありました。30坪と少しという広さ、神社の森が見えるとはいえ距離がある——文字から想像できる範囲で、すでに引っかかりがあったのだと思います。
実際に立ってみると、その気持ちはやはり変わりませんでした。担当者が「近くに神社の森が見える」と書いてくれていた通り、遠くに緑の塊は見えます。でも、土地から150メートル以上は離れていて、その間には建物も建っています。「借景」と呼べるのは、ほんのわずかな隙間から、というのが正直なところでした。
もう一つ気になったのは、神社の方角にある隣地が駐車場だったことです。神社の森を少しでも借景にしようとすれば、その方向に開口部を設けることになります。ただ、駐車場がそのまま残り続ける保証はどこにもありません。将来、そこに建物が建てば、開口部は隣家の壁に向くことになる。建てるなら、最初からそのリスクを折り込んでおく必要があります。
敷地に立って、あらためて「30坪と少し」を実感しました。やはり、狭さが引っかかります。「どう思う?」と夫に聞いてみると、「俺も同じ気持ち」という答えが返ってきました。
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正直に、見送りを伝えることにした
「担当者に、なんて返せばいいと思う?」
夫に聞いてみると、少し考えてから言いました。
担当者がわざわざ気を遣って教えてくれた土地を、断る。それがどこか申し訳ない気もしました。自分たちの判断が的外れなのかもしれない、という不安もありました。素人が感じたことを、そのまま伝えていいものか。
少し時間がかかりました。でも、夫の言う通りだと思いました。曖昧に返事をするより、「見送ります」と正直に伝えるほうが、担当者にとっても誠実です。自分たちのことを、ちゃんと知ってもらうためにも。それに——はっきり断れる人間でなければ、はっきり「ここにします」とも言えないはずです。
夫がLINEで返信を送りました。
帰り道のスーパーで
2件を見終わって、帰り道に近くのスーパーへ立ち寄りました。子どもたちの昼ごはんと、夜のおかずの材料を買うためです。
私が野菜や肉を選んでいる間、夫はスーパーの通路の端で立ち止まって、スマホとにらめっこしていました。邪魔です。
かごに食材を入れながら横目で見ると、夫は完全に別の世界にいます。人が脇をすり抜けても、店内に流れるBGMが変わっても、気づいていない。私はだいこんを手に取り、豆腐の棚の前で立ち止まり、特売のシールを確認し——夫は、ずっとそのままです。
レジに並んで、会計をしている間も、夫は私の後ろでスマホを見たままでした。店員さんが合計金額を告げても、袋に詰めている間も。
駐車場に向かう途中、夫がようやく顔を上げて言いました。
「洪水ハザードマップと内水氾濫は大丈夫だった。液状化も問題ない。ただ、震度が——近所は6弱想定なんだけど、あのあたりは6強になってる」
どの程度まで気にすべきなのか、正直わかりません。気にしすぎれば土地は選べなくなるし、気にしなさすぎるのも怖い。その基準が、素人にはなかなか掴めないのです。
▷ 地盤の「やわらかさ」が揺れを増幅させる
地震の揺れの大きさは、震源の深さや距離だけでは決まりません。地盤の性質によって、同じ地震でも体感する揺れが大きく変わります。これを「表層地盤増幅率」と呼びます。
川が運んだ土砂が堆積した沖積層や、かつて田んぼだったエリア、旧河道(昔の川跡)などは地盤が柔らかく、揺れが増幅されやすい傾向があります。一方、固い岩盤や古くから乾いた洪積層は揺れにくいとされています。隣り合うエリアで「6弱」「6強」と想定が分かれるのは、この地盤の違いが主な原因です。
▷ 震度6弱と6強、体感の違い
- 震度6弱:立っていることが困難になる。固定していない家具の大半が移動し、倒れるものもある。
- 震度6強:立っていることができなくなる。固定していない家具のほとんどが移動・転倒する。壁のタイルや窓ガラスが破損することもある。
▷ 震度の想定だけで土地の良し悪しを決めるのは難しい
土地の震度想定は、あくまで「傾向」です。より重要なのは、①地盤調査の結果と②建物の耐震性能です。
地盤が弱い場合でも、柱状改良や鋼管杭といった地盤改良で対策できるケースがほとんどです。建物については、耐震等級3を取得していれば、震度6強相当の地震でも倒壊しないことを基準としています(耐震等級1の1.5倍の耐震性能)。
地盤改良が必要かどうかは、実際に地盤調査をしてみるまで正確にはわかりません。ただ、周辺エリアの地盤傾向や過去の調査データをもとに、工務店がある程度の感触を持っていることもあります。まずは「このエリアはどうですか?」と相談してみることが、判断の手がかりになるかもしれません。土地単体ではなく、地盤改良費が発生した場合の総費用も念頭に置いて検討するのが、家づくりにおける現実的な見方だと思います。
※国立研究開発法人防災科学技術研究所(NIED)が運営する「地震ハザードステーション(J-SHIS)」では、地盤の増幅率を地図上で確認することができます。
夫がハザードマップを調べ続けていたのは、1件目の土地——あの44坪の角地のことを、まだ頭で整理していたからだと思います。「候補」と呼べる土地がひとつ増えた、その程度の手応えでした。
「新しく擁壁を作っているということは、地盤調査をしているかもしれない」と夫が言いました。もしそうなら、調査結果を取り寄せることができるかもしれません。根拠があるわけではなく、素人が勝手に想像しているだけですが。
「震度6強が気になる?」と聞くと、夫は少し考えてから言いました。
「…まあ、工務店に相談してみるか」
次回
候補がひとつ増えた。でも土地探しは、まだ続きます。
まとめ
- B社からの連絡待ちが続く中、以前見た予算オーバーの土地が「売却済み」に。いい土地は、迷っている間に誰かが買っていく
- 工務店の担当者から30坪と少しの土地情報が届く。気にかけてくれた嬉しさの裏に「私たちのことが伝わっていないかも」という戸惑い
- 土曜日に夫と2件内見。1件目は44坪の角地(予算内・学区OK・夫がアプリで境界を確認し始める)。明らかに違う空気
- 2件目は担当者推薦地。メッセージの段階から「ないかな」と感じていた通り、現地でも確認。夫も同意見
- 「こっちも真剣だから、はっきり伝えよう」——素人なりの正直な判断で、夫がLINEで見送りを伝える
- 帰り道のスーパーで夫はひたすらハザードマップを確認。洪水・液状化はOK、ただし震度6強エリア。どこまで気にすべきか、答えが出ない
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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💬 よくある質問
- Q. 工務店が土地を紹介してくれることはありますか?
- A. あります。工務店によっては不動産会社と独自のネットワークを持ち、建築条件なしの土地情報を施主に共有してくれることがあります。土地探しを工務店にも伝えておくと、一般には出回らない情報が届くこともあります。ただし、紹介された土地でも自分たちの目でしっかり確認することが大切です。
- Q. 震度6強エリアの土地は避けた方がいいですか?
- A. 一概には言えません。震度の想定は地盤の性質によって大きく変わりますが、より重要なのは地盤調査の結果と建物の耐震性能です。地盤が弱い場合でも地盤改良で対策できるケースが多く、耐震等級3の建物であれば震度6強相当の地震にも対応した基準となっています。
- Q. 担当者が紹介してくれた土地を断るとき、どう伝えればいいですか?
- A. 曖昧にせず「見送ります」と正直に伝えるのが誠実です。理由を添えると担当者も次の提案に活かしやすくなります。素人なりの感想でも構いません。はっきり意思表示する方が長い目で見て関係がよくなります。






