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カイ・ボイスンのモンキー、一生物にお金を払う感覚を手に入れた話

2026 5/18
家具・雑貨
2026年5月14日2026年5月18日
⏱ 読了目安:約17分
いえづくりブログ — 番外編 | 📚 連載一覧
第4話 / 連載中
番外編

⏱ 読了目安:約13分

👩 妻のひとこと

値段だけ見て「購入しないで」と言った私が、箱から取り出されたモンキーの木目を見た瞬間、衝動買いの気持ちが分かってしまいました。「高い」か「安い」かは値札だけでは決まらない——70年以上愛されてきたデザインなら、わが家の次の70年に寄り添ってくれる。家づくりという大きな買い物の前に、その感覚を手に入れたことは、たぶん幸運でした。

本記事にはアフィリエイト広告(PR)が含まれます。

📐 情報
この記事について 注文住宅の家づくりを進めているわが家が、実際に愛用している北欧雑貨を紹介するシリーズです。今回は第1回。新居にも連れていきたい、大切な「小さな住人」について書きます。
目次

最初にわが家に来たのは、小さなダックリングだった

モンキーの話の前に、少しだけ前置きがあります。

2025年の夏頃、夫は友達と一緒に岐阜の飛騨高山へ出かけました。目的地は、キタニの本社ショールーム。デンマーク家具デザイナー、フィン・ユールの邸宅を日本で再現したことで知られる、北欧デザイン好きの聖地のような場所です。

ショールームに北欧雑貨は、そんなに多くは置いていなかったそうです。それでも、夫はその日、小さな木のアヒルの子に一目惚れをして連れ帰ってきました。ハンス・ボーリングという、これもまたデンマークのデザイナーによる木製オブジェで、その名も「ダックリング」。英語で「アヒルの子」という意味です。

手のひらサイズのその子は、リビングの棚にちょこんと置かれ、わが家で最初の「小さな住人」になりました。北欧好きな夫婦が、ようやく手に入れた一体。かわいらしい存在感が、日常の風景を少しだけ豊かにしてくれた夏でした。

——さて、ここから本題です。

ある日、夫から突然届いたサルの写真

夏が過ぎ、2025年の秋頃のこと。

賃貸暮らしが10年目に入り、わが家では「そろそろ家を建てようか」という会話が、少しずつ現実味を帯び始めていました。まだFP相談も住宅ローンの審査もしていない、夢物語と現実の間にある段階。それでも、自分たちの暮らしの未来を本気で考え始めた、節目の時期です。

そんなある日のこと。知人夫婦の新築祝いを探していた夫から、突然スマホにLINEが届きます。画像を開くと、そこには丸い顔で微笑む、木製のサルが写っていました。

かわいい。素直にそう思いました。

でも、次に送られてきた値段を見て、思わず画面をスクロールし直しました。桁を間違えているのかと思ったのです。

間違いではありませんでした。私は正直に返信しました。

妻
「これ、購入しないで欲しい」

わが家にはすでに、夏に迎えたダックリングがいます。それで十分じゃないか、というのが正直な気持ちでした。これから家づくりという大きな買い物が控えている時期に、雑貨にこの金額を重ねるのはどうなのか。そう考えるのはごく自然な反応だったと思います。

ところが夫は、東京・南青山のカール・ハンセン&サンに出向いて、樹種の違うモンキーを前に真剣に悩んでいたのです。メープル、スモークドオーク、そしてチーク。最終的に夫が選んだのは、深い飴色のチーク材のものでした。

連れ帰ってきた、小さな住人

夫が帰ってきたのは、翌日のことでした。

手には思いのほか小さな紙袋。スモールサイズのモンキーは、実寸でも高さ20cmほど。家に届いてみれば、拍子抜けするほどささやかな佇まいで箱に収まっていました。

リビングのテーブルで箱を開け、中からそっと取り出されたサル。照明の下で見たその姿に、私は言葉を失いました。

カイ・ボイスンのモンキー(チーク材・スモールサイズ)
チーク材とリンバ材のコントラスト。どの角度から見ても、確かに微笑んでいる。

木目の一本一本が、表情を持っている。

写真では伝わらなかった質感でした。チーク材とリンバ材の組み合わせで、顔と胴体、手足のコントラスト。ほどよい重さ。指で触れたときの、滑らかで温かい感触。何より、どの角度から見ても、このサルは確かに微笑んでいるのです。

反対していた私が、つい口にしていました。

妻
「これは……衝動買いする気持ち、分かるかも」

夫は何も言わず、ただ少し誇らしそうに笑っていました。

値段で判断していた私の見方が、少しだけ変わった瞬間でした。「高い」か「安い」かは、値札だけでは決まらない。そのことに、遅ればせながら気づかされたのです。

1951年から、70年以上愛され続けている理由

このサルの正体は、デンマークの巨匠デザイナーカイ・ボイスン(Kay Bojesen, 1886-1958)による「モンキー」という木製オブジェです。

発表されたのは1951年。もう70年以上も、世界中で愛され続けている北欧デザインの金字塔です。

もともとは、子供用のコートフックだった

面白いのは、このモンキーが最初から飾り物として作られたわけではないということ。

きっかけは、子供家具の展示会のために「コートフックをデザインしてほしい」という依頼だったそうです。カイ・ボイスンは、大人用のハンガーに手が届かない子供でも、自分で服や帽子をかけられるように、長い腕と短い脚を持つサルをデザインしました。長い腕を大人のハンガーに引っ掛ければ、短い脚の高さに子供用のフックができあがる——そんな、暮らしに寄り添う発想から生まれた作品なのです。

発売された最初の1ヶ月で600体が売れたといいます。デザインというより、生活の道具として愛されたのが、このモンキーの出発点でした。

「線は笑うべき」というデザイン哲学

カイ・ボイスンが生涯大切にしていた言葉に、こんな一節があります。

「線は笑うべきだ(The line should smile)」

無表情な直線ではなく、どこか人間的で、温かみのある曲線であるべきだ——モンキーの丸い頭、ひょうたん型の胴体、弧を描く腕と脚。確かに、すべての線が微笑んでいるのです。

カイ・ボイスンはもともと銀細工師として出発し、あのジョージ・ジェンセンで修行を積んだ経歴を持っています。長男が生まれたことをきっかけに木製玩具の制作を始め、金属と木、まったく異なる素材を行き来しながら、一貫して「手にしたくなるもの、愛おしく感じるもの」を作り続けました。

デンマークでは2世帯に1体あると言われている

この数字が本当かどうかはさておき、デンマークの国民的アイコンであることは間違いありません。王室御用達の地位を持ち、ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館で展示されるなど、世界的な評価を受けています。

調べていくうちに、一つの想いが胸に残りました。70年以上、世代を超えて愛され続けてきたという事実。これほどの時間に耐えてきたデザインなら、わが家の次の70年にも、きっと寄り添ってくれるはずだと。

そう思ったとき、購入価格に対する私の抵抗感は、すっかり消えていました。

📦 製品情報
🐒 カイ・ボイスン モンキーの基本情報

デザイナー:カイ・ボイスン(1886-1958)

発表年:1951年

製造:Kay Bojesen Denmark(ローゼンダール社)

素材:プランテーションチーク材・リンバ材

サイズ展開:Mini(高さ約9cm)、Small(約20cm)、Medium(約28cm)、Large(約46cm)

可動箇所:9箇所(肩・首・手首・股関節など)

わが家が迎えたのは:Small、チーク材

わが家での、小さな楽しみ方

購入から半年ほど経ちました。今では、すっかり暮らしの一部です。

普段の定位置は、夏に夫が連れ帰ってきた、ハンス・ボーリングのダックリングの隣。ちなみに、その後この冬にはダックの親鳥もわが家に迎え入れ、今では三体そろった姿が、わが家の小さな動物園になっています(ダックの話は、また別の記事で書きます)。

このモンキーの面白さは、なんといっても関節が9箇所も動くことです。肩、首、手首、股関節。それぞれがゴムで繋がれていて、自在にポーズを変えられる。だから飾るだけでなく、遊べるのです。

模様替えをするとき、私たち夫婦はこのサルに新しい仕事を与えます。本棚の縁に腕を引っ掛けてぶら下げたり、両手で封筒を持たせて「配達員」にしたり、ランプのアームに乗せてみたり。部屋の空気を変える、小さなマスコットになってくれるのです。

本棚の縁に腕を引っ掛けてぶら下がるカイ・ボイスンのモンキー
本棚の縁に腕を引っ掛けて。長い腕は、こういう使い方のためにある。

特別な手入れはしていません。時々乾いた布で埃を拭うくらい。それでも、日々目に入るたびに、なんとも言えず気持ちが安らぐのです。仕事で疲れて帰宅した夜、ふと目が合うと、その微笑みに救われる。そんな感覚があります。

安い買い物ではありませんでした。でも、毎日何度も目が合って、そのたびに気持ちが和らぐモノのコストパフォーマンスを、値札だけで判断してはいけないのだと思います。

📖 家づくり日記・本編はこちら(連載第1話から)

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「色が薄くなった気がする」は、私の勘違いだった

半年ほど一緒に暮らしてきて、最近気になっていたことがあります。

購入したときより、少し色が薄くなった気がする——そう感じていたのです。チーク材は使い込むほど色が抜けていくのかもしれない。そう思って、なんとなく調べてみました。

すると、私の認識が真逆だったことが判明しました。

メーカーの公式サイトによれば、このモンキーに使われているプランテーションチークは、光と空気に触れることで、時間とともにより深く、均一で温かみのある黄金色のブラウンへと変化していくそうです。つまり、色は薄くなるのではなく、深まっていくのが正解。

私が感じていた「薄くなった」は、おそらく購入直後の興奮が落ち着いて、見慣れてきただけのこと。モノ自体は、少しずつ、わが家の時間を吸い込んでいたのです。

💡 ヒント
🌿 チーク材の経年変化について

チーク材は、時間の経過とともに光と空気の作用で色合いが変化します。新しいうちはやや黄色味のある明るい色合いから、年月を経るにつれて深い飴色へ——使い込むほどに美しくなる素材です。定期的に家具用オイルを薄く塗ると、より深い艶が生まれるとのこと。わが家もいずれ試してみたいと思っています。

この発見は、小さな驚きであると同時に、大きな気づきでもありました。モノと一緒に時間を重ねていくというのは、こういうことなのかもしれない、と。経年劣化ではなく、経年美化。この言葉の意味が、少しだけ分かった気がしました。

「一生物」という言葉の、本当の重さ

モンキーを迎えてから半年。わが家の家づくりも、着実に前に進んできました。

FP相談を経て資金計画を立て、住宅ローンの事前審査を通し、土地探しを始めて3ヶ月。この間に、「一生物」という言葉に何度も出会いました。キッチン、フローリング、造作家具、システムバス——すべてが「一生物」として提案され、一つひとつが数十万から百万円単位で計上されていきます。単位が「万円」ではなく「百万円」で動いていく世界で、金銭感覚が揺さぶられる日々です。

そんな日常の中で、ふと我に返らせてくれるのが、このモンキーの存在でした。

「一生物」は、値段の大小で決まるのではない。「何十年と共に過ごすことを、自分が選べるかどうか」で決まるのだと、この小さなサルが教えてくれます。

1951年から作られ続けているこのサル。わが家に来てまだ半年ですが、使い方によっては、私たちが生きている間ずっと、その先も家族の一員でいてくれるかもしれません。そう思うと、購入価格を生涯時間で割ったときのコストは、驚くほど小さくなります。

家づくりでお金を使うときも、同じモノサシで考えたいと今は思っています。高い安いではなく、「何年、自分たちと一緒にいられるか」で判断する。そういう目を持てるようになったのは、家づくりが本格化する前に、このモンキーが先回りして教えてくれた贈り物だと感じています。

次の夢は、ラージサイズと、カトラリー

モンキーをわが家に迎えたあとのこと。夫婦で大阪に出かける機会があり、カール・ハンセン&サン フラッグシップ・ストア大阪にも立ち寄りました。そこで出会ったのが、ラージサイズのモンキーの実物です。スモールの倍以上、高さ46cmの堂々たる風格で、やはり、かわいらしい。

ただ、価格がスモールとは桁違いで、二人揃って苦笑いをしながら店を後にしました。大阪店の店員さんからは「今年また、1割ほど値上げする予定です」と教えていただき、いつかは……という気持ちを胸に抱えたまま、いまは遠い夢として楽しみにしています。

もう一つ、新居で揃えたいものがあります。それは、カイ・ボイスンのカトラリーです。

実は、モンキーより先に、カイ・ボイスンがデザインしていたのはカトラリーでした。銀細工師として出発した彼が1938年にデザインしたシリーズは、1951年——奇しくもモンキーが世に出たのと同じ年——にミラノ・トリエンナーレで最優秀賞(グランプリ)を初受賞し、その後3年連続で最優秀賞に輝きました。こうして、その名も「グランプリ・カトラリー」として世界中に広まっていきます。

デンマーク王室御用達、各国のデンマーク大使館で使われているというこのカトラリーは、現在は新潟県燕市の大泉物産が世界総製造元として手がけています。デンマーク発の名作が、日本の職人の手で世界へ送り出されている。この事実だけでも、なんだか嬉しくなります。

新居が完成したら、ダイニングテーブルで、このカトラリーで食事をする。その光景を想像するたびに、家づくりのモチベーションが少しだけ上がるのです。

新居の飾り棚で、次の70年を一緒に

土地がまだ決まっていない今、具体的な間取りの話はできません。でも、新居にはぜひ「飾り棚」を作りたいと思っています。

壁面に奥行きのある造作棚を設けて、そこにこのモンキーとダック親子を飾る。長い腕を棚の縁に引っ掛けてぶら下げたり、季節ごとに小物を持たせたり。家族の一員として、毎日目に入る場所に置きたいのです。

いつか子供たちが大きくなったとき、「これ、家づくりを考え始めた頃、お父さんがどうしても欲しくて買ったんだよ」と話す日が来るかもしれません。そしてさらにその先、私たちがこの世を去った後も、子供たちに引き継いでいってほしいと、今から願っています。

たかが一体のサル。されど、一生物。

家づくりという大きな決断の連続の中で、このモンキーがくれた感覚は、これからも私たちを支えてくれる気がしています。

📝 まとめ

まとめ

  • 夫がカール・ハンセン&サン東京で衝動買いしてきたカイ・ボイスンのモンキー。最初は値段で反対した
  • 実物を見たとき、木目と表情と質感に圧倒された。値段では測れない価値があることを教えられた
  • 1951年の発表から70年以上、世界中で愛され続けるデザインの力強さ
  • 「線は笑うべき」というカイ・ボイスンの哲学が、確かに宿っている
  • 半年間の暮らしで気づいた「経年美化」の楽しみ。色は薄くなるのではなく、深まっていく
  • 家づくりが本格化する前に出会えたことで、「何年一緒にいられるか」というモノサシが先に手に入った
  • 次はラージサイズと、カトラリーを新居で揃えたい。そして子供たちに引き継いでほしい

次回は、わが家に最初にやってきた「ハンス・ボーリングのダック親子」について書きます。飛騨高山で子を迎え、大阪で親と再会した、半年越しの物語です。お楽しみに。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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💬 よくある質問

Q. カイ・ボイスンのモンキーは正規品と類似品でどう違いますか?
A. Kay Bojesen Denmark(ローゼンダール社)の正規品にはブランドロゴと製造番号が入っています。素材はチーク材とリンバ材の組み合わせで、関節部のゴムも品質管理されています。類似品は数年で関節が緩むなどの違いが出るため、長く使うなら正規品がおすすめです。
Q. モンキーのサイズはどれを選べばいいですか?
A. サイズはMini(9cm)、Small(20cm)、Medium(28cm)、Large(46cm)の4種類です。全サイズとも頭・肩・股・手首・足首の9箇所が可動する木製玩具として販売されており、サイズ別に「子ども向け/大人向け」と分かれているわけではありません。棚や机に飾るならSmall、リビングのアクセントにするならMedium、存在感を求めるならLarge——というように、使い方と予算で選ぶのが一般的です。複数サイズを並べて飾る方もいます。

📌 連載の続きを読む

  • ◀ 番外編 第3話:取り壊し直前の伊礼智設計の平屋を見学、建物も家具も見ないとわからない
  • ▶ 番外編 第5話:ハンス・ボーリングのダック親子、わが家の動物園が始まった話

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✍️ この記事の書き手

いえづくり妻

都市部で土地から注文住宅を建てる40代・4人家族の妻。直感派の私と、調べ始めたら止まらない自営業の夫で、FP相談・土地探し・住宅ローンのリアルを等身大で記録しています。

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いえづくり妻
注文住宅建築中(40代・自営業+パート・4人家族)
はじめまして、いえづくり妻です。都市部で土地から注文住宅を建てようとしている、40代・4人家族の妻です。家族は、何かにハマると底なしに調べ続ける自営業の夫と、感覚で「いいな」を判断する妻、そして子ども2人。賃貸10年の限界を感じたところから、FP相談、住宅ローン事前審査、土地探しと、一つずつ階段を上っています。このブログでは、予算の綱引き、不動産業者4社との面談、見学会で感じたことなど、試行錯誤をそのまま記録しています。同じように「土地から家を建てる」を検討している方のヒントになれば嬉しいです。
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