不動産業者に条件を伝えているのに、紹介される土地が「全部、自分でも調べたことがあるもの」だった。そんなすれ違いを経験したことはありますか。
私たちも、3回目の面談で示された7件の中に、一つも「初めて見る土地」がありませんでした。あのとき夫が「検討済みです」と一つずつ説明したときの空気は、今でも忘れられません。
この記事では、その日に起きた「早く決めてほしい」という空気への戸惑いと、それに流されなかった夫婦のやり取りをお伝えします。
この記事でわかること
- 紹介された物件が全部ランディで見たことがある土地だった——業者を増やしても同じ土地が出てくる現実
- 建ぺい率やハザードマップを自分で調べていた夫が、1件ずつ見送った理由を即答した場面
- 自分たちが見送った土地を強く勧められた——前面道路の狭さ・集合住宅の圧迫感を伝えた話
- 予算を約1,000万円超える土地が、その場の電話で動き出した——1年半売れていない物件に値下げの余地?
- 「自分は2秒で決めた」と言う業者に夫が返した「一生に一度の買い物ですので」という一言
← 注文住宅の土地探し、4社目の不動産業者で「自社物件」を初めて知った日|待てば土地は安くなるのか?業者に聞いてみた
「会員限定物件多数」の広告から夫が勝手にアポを取り、4社目の不動産業者を訪ねました。県内12店舗を持つ仕組み型の業者で、「待てば土地は安くなりますか?」と聞いたところ、コロナ後は一貫して上昇しているとの回答。また「自社物件」という仲介手数料のかからない仕組みを初めて知りました。紹介された物件は見送りましたが、1週間後に提案資料を見せてもらう約束をして店を出ました。今回は、工務店紹介の仲介業者(1社目)との3回目の面談です。
あまり前向きな気持ちではありませんでした。
前回の面談で紹介された5件の土地は、すべて現地を見に行きました。結果は全滅。どの物件も駅からの距離が遠すぎて、日常の生活が想像できませんでした。抜け感のある暮らしは理想ですが、だからといって駅から30分もかかる場所に住むのは、共働きの子育て世帯には現実的ではありません。
面談の後、仲介業者にLINEを送りました。「駅からの距離は、やはり外せない条件です」と。前回、この条件をきちんと伝えていなかったのは私たちの落ち度でもあったので、今回はしっかり言葉にしておきたかったのです。
それでも、3回目の面談に向かう車の中で、どこか気持ちが重たかったのは事実です。前回は現地を一度も見ていない物件を紹介されたこともあり、「今回は変わっているだろうか」という不安がありました。
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登場人物:直感派の妻と、調べ始めたら止まらない自営業40代の夫。都市部で土地から注文住宅を建てる4人家族の記録です。連載のあらましは 第1話 からどうぞ。
「僕も、前回の土地で決まるとは思っていなかったんですよ」
業者から紹介された7件すべてが「自分でも見たことがある物件」だった日。自分で物件情報を調べる習慣のコツは、土地探しまとめ記事に収録しています。
席について、挨拶もそこそこに、仲介業者がこう言いました。
「先日ご紹介した中で、5件すべて現地を見に行ってくださったんですよね。ありがとうございます。ただ、僕も、あの土地で決まるとは思っていなかったんですよ」
夫の顔がこわばったのが、隣に座っていてわかりました。
決まるとは思っていなかった物件を、紹介していた。私たちは5件すべてを見に行って、それぞれの現地を歩いて、時間をかけて判断した。その労力を知った上で、「決まるとは思っていなかった」と言われると、じゃあ何のための面談だったのだろう、という気持ちが湧きます。
けれど、ここで気持ちをぶつけても何も進まない。私はとにかく今回の提案を見てみよう、と思い直しました。
紹介された物件、全部見たことがある
仲介業者は、「今回はこちらです」と言って、紙の資料を何枚も並べました。
一枚目の物件情報を見た瞬間、私は気づきました。この土地、ランディ(※不動産検索サイト)で見たことがある。二枚目も、三枚目も。次々と並べられる資料のすべてが、私たちがネット上で一度は目にしている物件でした。
紹介された物件が見たことのあるものばかりだったのは、考えてみれば不思議なことではありません。私たちも毎日のようにランディやスーモで土地情報を検索しているのですから、条件に合う物件が出れば目に入るのは当然です。
ただ、「見たことがある」だけではありませんでした。夫はその一つひとつについて、すでに検討を終えていたのです。
仲介業者が物件を紹介するたびに、夫がすでに調べた情報を返す。その繰り返しでした。仲介業者は驚いた様子で、夫の知識量に感心しているようでしたが、私の中には別の思いが浮かんでいました。
建ぺい率もハザードマップも、ネットで調べればわかる情報です。物件を紹介する前に、そこまで確認しておいてほしかった——と思う気持ちがないと言えば嘘になります。
でも同時に、ここまで自分たちで調べていたんだ、という事実にも気づきました。夫がYouTubeで住宅動画を見始めた頃、私はまだ「ついていく側」でした。それが今は、夫が建ぺい率やハザードを即答できるほど調べ、私は不動産業者を1人で訪ねるまでになっている。私たちは、思っていた以上に「自分たちで探す力」を持ち始めていたのかもしれません。
💡 建ぺい率・ハザードマップは自分でも確認できる
建ぺい率・容積率は、各自治体の都市計画情報や「用途地域マップ」で確認できます。ハザードマップは国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」で住所を入力するだけ。不動産業者の提案を待つだけでなく、自分でも事前にチェックしておくと、面談の時間をより有効に使えます。我が家は、気になる物件を見つけたらまずこの2つを確認する習慣がついていました。
自分たちで見に行っていた土地を、強く勧められた
途中から、夫も私も、見たことがある物件ばかりであることを悟り、できるだけ初めて見る体で話を聞くようにしていました。相手の説明を遮り続けるのは、お互いにとって良い時間にならないと思ったからです。
そのなかに、一件だけ、少し事情が違う物件がありました。
どの不動産業者からも紹介されたことはないけれど、私たちがランディで見つけて、気になったので自分たちで現地を見に行っていた土地です。
実際に歩いてみた結果、見送っていました。前面道路が思っていたより狭かったこと、目の前に集合住宅があって圧迫感を感じたこと、そして起伏の大きい場所にあり、日常の出入りに不安を感じたこと。夫と私は、現地を一周して顔を見合わせ、「ここはないね」と結論を出していました。
この物件は、自分たちでも見に行ったことがあります。検討しましたが、購入するつもりはありません。
ところが、仲介業者は引きませんでした。
どこがダメだったんですか?すごくいい物件だと思うんですけどね。
前面道路の狭さを伝えても、集合住宅のことを話しても、「でもこの立地はなかなかないですよ」と食い下がります。
推してくれること自体は、ありがたいのかもしれません。営業として、良いと思う物件を勧めるのは自然なことです。ただ、私たちは実際に現地を歩いて判断した上で見送った物件です。その経緯を伝えた後に重ねて勧められると、「この人は私たちの判断を聞いてくれているのだろうか」という気持ちが、少しだけ芽生えました。
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予算1,000万円オーバーの土地が、その場で動いた
📝 予算の前提:このシリーズの「予算」は、第9話の事前審査で打診された1億円を上限としています(FP面談時点の9,000万円から、銀行の打診を受けて1,000万円増額)。本記事の「予算1,000万円オーバー」は、上限1億円に対してさらに1,000万円超ということで、物件価格としては約1.1億円規模を意味します。
提案された物件の説明が一通り終わり、空気が冷えかけていました。
そのとき、夫が口を開きました。おそらく、このまま黙って終わるのが居心地悪かったのだと思います。
夫がスマートフォンを取り出しました。画面に表示されたのは、私も見覚えのある物件でした。
最近、夫が夜遅くにソファでスマートフォンを眺めているとき、何度かこの画面が見えていました。予算を大幅に超えていることはお互いにわかっていたから、私から話題にしたことはありません。でも、夫はずっとこの土地を気にしていたのだと思います。調べ始めたら止まらない人です。条件が良いとわかれば、手が届かなくても、何度もページを開いてしまう。それを、ずっと黙って続けていた。
私たちの予算を約1,000万円超える土地。夫は「予算的には到底無理なんですけど、安くなれば別ですけどね」と冗談めいた口調で付け加えましたが、その声には、冗談だけでは片づけられないものが、少しだけ混じっていた気がします。
すると、仲介業者がすぐに動きました。
その場で携帯電話を取り出し、売り側の仲介業者に電話をかけ始めたのです。
この物件なんだけど、値段って下がらない?
電話口の相手は戸惑っている様子でしたが、話を聞くと、その土地は価格の高さからもう1年半近く売れておらず、徐々に値下げを続けているとのこと。「難しいとは思いますが、検討の余地はあります」という回答でした。
電話を切った仲介業者が、「一度、見に行ってみますか?」と言いました。
困惑しました。夫は冗談のつもりだったかもしれないし、本心だったのかもしれない。いずれにしても、予算を約1,000万円も超えている。仮に値下げがあったとしても、その差は簡単に埋まる金額ではありません。土地にお金をかけすぎれば、その分、建物に使えるお金が減る。理想の家が遠のく可能性すらある。
でも、目の前で売り側の仲介業者に電話までしてもらった以上、「やっぱり見に行きません」とは言えませんでした。
「……はい、一度見てみます」
そう答えるしかなかった。
帰り支度を始めたあたりで、仲介業者がふとこんなことを言いました。
うちの会社でも、この間ちょうどいい土地が出たんですけど、僕は2秒で決めましたよ。
悪気はないのだと思います。「良い物件は、すぐ動いた方がいい」ということを伝えたかったのかもしれません。不動産のプロが、自社の事業用に買うなら、2秒で判断できる場面もあるのでしょう。
夫が穏やかに、でもはっきりと答えました。
私たちは、一生に一度の買い物ですので、同じようにするのは難しいですね。
その言葉を聞いて、私は少しだけ安心しました。急かされる空気の中でも、自分たちのペースを言葉にできている。3か月前の私たちだったら、愛想笑いでやり過ごしていたかもしれません。
帰り道——「早く決めてほしい」という空気の正体
車に乗り込んで、しばらくは無言でした。今日の無言は、感動でも驚きでもない。消化しきれない気持ちを抱えた沈黙でした。
「……紹介された物件、全部知ってたね」
夫がぽつりと言いました。私もうなずきました。
物件情報を事前に調べることは、お互いにとって当たり前の作業になっていました。だからこそ、紹介される物件がすべて既知のものだったとき、何とも言えない気持ちになったのだと思います。
振り返ってみると、今日の面談でいちばん戸惑ったのは、物件の質よりも、「早く決めてほしい」という空気だった気がします。見送った物件を重ねて勧められたこと。冗談で見せた物件にその場で電話をかけられたこと。ひとつひとつは営業として自然な行動なのかもしれません。でも、私たちのペースとは、少しずれていました。
家づくりは、何千万円もの決断です。焦って決めたくない。自分たちが納得できるまで、時間をかけて選びたい。そう思っている私たちにとって、「早く決めてほしい」という空気は、善意であっても、少しだけ息苦しく感じました。
でも、ひとつ気づいたこともありました。
夫が建ぺい率やハザードを即答していたこと。私が不動産業者を1人で訪ねるようになっていたこと。紹介される物件をすべて「見たことがある」と言えるほど、自分たちで調べていたこと。
知らないうちに、私たちは「業者に探してもらう」のではなく、「自分たちで探しながら、業者の力を借りる」という姿勢に変わっていたのだと思います。
信号が赤に変わって、車が止まりました。
「あの土地、見に行くことになっちゃったね」
夫が苦笑いしながら言いました。冗談で見せたつもりだったのでしょう。でも私は、夫が夜ごとあの物件のページを開いていたことを知っています。まさか現地見学に発展するとは思っていなかっただろうけれど、本当に「ただの冗談」だったのかは、少しだけ怪しいと思っています。
「まあ、見に行くって言っちゃったし。見てから考えよう」
そう答えながら、心の中では少しだけ思いました。予算を大きく超えていることはわかっている。でも、見に行くと決まった以上は、ちゃんと見てこよう。この3か月で学んだことがあるとすれば、「現地を見なければ、何もわからない」ということだったので。
土地探しの全記録をまとめ記事で体系的に解説しています。業者の選び方・土地を見るポイント・失敗しない判断基準まで詳しく解説。
→ 土地探しの全記録|家づくり初心者が学んだ失敗しないための完全ガイド
- 日頃から物件情報を検索していると、業者の提案の質を判断する力が自然と身につく
- 建蔽率・ハザードマップを事前に調べておくと面談の質が変わり、業者の提案を検証できる
- 「早く決めて」という空気を感じたときこそ、焦らず自分たちの基準を守ることが最も大切
📌 次にやるべきこと:土地探しの条件整理・判断基準の作り方をまとめました。
👉 土地探しまとめ|3ヶ月かけて学んだ条件整理と業者選びのコツ
紹介される物件が全部検討済みだったとき、自分たちで探す力の大切さを痛感しました。
📚 シリーズ別まとめ記事(ピラーページ)
家づくりの全テーマを5つの総合ガイドにまとめています。気になるテーマから読み進めてください。
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💬 よくある質問
- Q. 紹介された物件が全部「見たことある」だった時はどうすべき?
- A. 業者の情報網が自分と同レベルというサインです。別エリア得意な業者を追加するか、自分の探し方を見直す合図になります。我が家も方針を切り替える契機になりました。
- Q. 自分で物件情報を調べる習慣は必要?
- A. 必要です。日常的に検索していると、紹介物件の質を判断できる目が育ちます。建蔽率やハザードマップの読み方も自然に身につきます。
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