子ども部屋に入った瞬間、「あ、ここは違うな」とすぐにわかりました。クロスの壁、シートフローリング。前の部屋とは明らかに素材が変わっていた。でも不思議と、不満には感じなかった。「ここで調整しているのか」という腑落ち感がありました。この記事では、上物約5,200万円の平屋がどこにお金をかけて、どこで調整していたか——見学会で気づいたコスト配分のリアルをお伝えします。(なお、別の機会に伊礼智設計の平屋見学記録もまとめています)
前回のあらすじ
「低い」——平屋の屋根がこれほど地面に近いとは、と思いながら敷地に入りました。廊下を抜けたリビングで、夫と私はほぼ同時に立ち止まりました。床が一段下がっていた——ピットダウンリビングです。
木製サッシ越しに見える外の緑の穏やかさ、オークの引き板フローリングを歩いた感触。「無垢にするとどのくらい変わりますか」と担当者に尋ねた夫が、「無垢であればいい」という前提を少し揺らされた場面が印象に残っています。
今回は、上物5,200万円の「かけどころと締めどころ」の全貌を見ていきます。
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- 上物5,200万円のうち「お金をかけた場所」と「削った場所」——コスト配分の具体例
- リビングに予算を集中し、子ども部屋や浴室は実用仕様に抑える判断をどう考えたか
- 完成見学会を複数回見て気づいた「何にこだわるか」を自分たちで選ぶことの意味
- 「ここで建てたい」と「もう少し比べたい」——2つの気持ちが並走している正直な心境
登場人物:直感派の妻と、調べ始めたら止まらない自営業40代の夫。都市部で土地から注文住宅を建てる4人家族の記録です。連載のあらましは 第1話 からどうぞ。
子ども部屋と風呂——「締めるところ」が見えた
2階のない平屋なので、子ども部屋も同じ階に並んでいます。
リビングやキッチンとは打って変わって、子ども部屋の内装はクロスの壁にシートフローリングでした。入った瞬間「あ、ここは違うな」とすぐにわかりました。でも不思議と、不満には感じなかった。むしろ、「なるほど、ここで調整しているのか」という腑落ち感がありました。
浴室もユニットバスでした。前回のモデルハウスで、全面タイル張り・間接照明のホテルライクな造作風呂に「うわ」と声が出た我が家です。あれと比べれば、当然ぜんぜん違う。でも清潔感があって、機能的で、日々の使い勝手としては十分すぎるくらいのものでした。
子ども部屋と浴室で気づいた「コスト配分の哲学」
担当者がさらっと言った言葉が、記憶に残っています。「お金をかけるところはかける。締めるところは締める。 そのバランスが、長く暮らせる家になると思っています」と。
その言葉を聞いて、私はもう一度、ピットダウンリビングに足を踏み入れたときの感覚を思い出していました。リビング、木製サッシ、造作キッチン——そこに力をかけて、子ども部屋とお風呂は実用的な仕様に抑える。全部に感動する必要はない。「何にこだわるか」を自分たちで選ぶことが、家づくりということなのかもしれないと、少し整理されてきた気がしました。
このとき私の中で、一つ方針が固まりました。「リビングで妥協しない」ということです。予算の話になると、あれもこれも削らなければいけない気持ちになる。でも、毎日いちばん長く過ごす場所だけは、最後まで諦めないでおこう——それが、この見学で私が「決めた」ことでした。
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最後に、金額を聞いた
見学の最後に、担当者から今回の家の費用について教えてもらいました。
外構費用も含めた上物の総額が、約5,200万円。以前の記事で見た28坪の家が約3,500万円でしたから、今回はその1,700万円上です。我が家が考えている予算の上限と比べると、今回の金額は大幅に超えています。「どこにお金をかけ、どこを抑えるか」という設計の考え方は参考になっても、この仕様そのままは現実的ではない——そう頭ではわかっていながら、ピットダウンリビングで感じた「あの包まれる感覚」が忘れられないのも、また本当のことでした。
聞いた瞬間、夫がいつもより少し長く黙っていました。普段なら費用の話を聞いた後にすぐ「坪単価でいうと〜」と計算を始めるのに、このときはただ静かに頷いていた。
私も、しばらく何も言えませんでした。
たしかに、素晴らしい家でした。ピットダウンリビングも、木製サッシも、造作キッチンも。ただ、3,500万円という数字を聞いたときとは、重さが少しちがいました。あのときは「いい家には、それだけかかるんだ」と、どこか他人事として受け取った気がします。でも今回は、自分たちが信頼している担当者が、施主のために建てた家の値段でした。「同じような家を、この人に建ててもらうとしたら」という想像が、自然と浮かんでしまった。
28坪2階建てと平屋、1,700万円差をどう見るか
前回見た28坪・2階建ての完成見学会は、同じく外構込みで約3,500万円でした。同じ工務店が建てた家なのに、1,700万円の差がある。今回は平屋で坪数も違いますが、ピットダウンリビング・木製サッシ・造作キッチン——どこにお金をかけたかが、そのまま数字に表れているということでもあります。コストを抑えた部分があってもなお、5,200万円。それが上物だけの金額です。
夫が「他のハウスメーカーも見たい」と言いはじめた夜
帰りの車に乗って、しばらくしてから夫が言いました。「YouTubeで見てた家って、もっとすごいじゃん……あれ、実際にはいくらかかるんだろう」と。
その言葉の続きは言いませんでしたが、意味はわかりました。動画の中で見てきた「理想の家」と、実際に目の前に建っている家と、予算と——それらをどう折り合わせるか、という問いが、夫の中で静かに大きくなっているんだと思いました。
「ほかのハウスメーカーも、見てみたほうがいいかな」と、夫がぽつりと続けました。
どこか気になるところあるの?
いくつかYouTubeで見てる。
いくつかって、何社?
……7社。見てるだけだから。
7社は「見てるだけ」の範囲を超えていると思います。
悩みは増える一方だけど、それだけ真剣に考えているということなのかもしれない。私は「そうかもね」とだけ答えました。
今回見学した家の概要(参考)
| 構造・規模 | 平屋 |
|---|---|
| 駐車場 | 土間コンクリート(洗い出し仕上げなし) |
| リビング | ピットダウンリビング・木製サッシ |
| 壁仕上げ(リビング) | ペイント仕上げ(漆喰ではない) |
| 床材(リビング) | オーク引き板フローリング(オーク材を薄く挽いた板を貼り合わせた複合フローリング。無垢材の風合いに近く反りが起きにくい) |
| 子ども部屋 | クロス壁・シートフローリング |
| 浴室 | ユニットバス |
| キッチン | 造作 |
| 上物費用(外構込み) | 約5,200万円 |
担当さんの「仕事」が、少しわかった気がした
帰り道、夫がもうひとつ言ったことがあります。「担当さんって、ちゃんとわかってる人だな」と。
具体的な言葉はそれだけでしたが、たぶんこういう意味だったと思います。全部を詰め込まずに、どこを見せてどこを抑えるかを選んでいる。施主の暮らし方に合わせて、優先度をちゃんと設計している。そういう仕事をする人だ、という確認が、今日できた——と。
担当者の実力を見たくて来た見学でした。その点で言えば、来た意味はあったと思います。契約前の我が家にここまで動いてくれる担当者への感謝を、改めて感じた帰り道でした。
ただ夫の中では、「ここで建てたい」という気持ちと、「もう少し比べてみたい」という気持ちが、今も並走しているようです。
思えば、夫はもともとそういう人です。何かにハマると底なしに調べる。納得するまで比べる。それを「優柔不断」とは思っていません。この人が「比べた上で選んだ」と言える状態になって初めて、この担当者への信頼も、本物の信頼になる。そういう意味では、「他も見てみたい」という気持ちは、信頼している担当者だからこそ生まれた正直な感情なのかもしれません。
ピットダウンリビングに足を踏み入れたときの、あの包まれる感覚は、私の中にもまだ残っています。比べた先でも、この感覚を超える場所がなければ——そのときは迷わず戻ってこれる、という気持ちもあります。しばらく夫婦で話しながら、次の一手を考えていくことになりそうです。
この見学会を経て、私たちが本当に持ち帰ったのは数字よりも「設計の哲学」でした。坪単価や総額よりも、何にお金をかけ、何を削るかという優先順位の考え方が、家の満足度を左右するのだと肌で感じました。リビングに力を集中させ、水回りや子ども部屋をシンプルにまとめた設計は、私たちの価値観とも重なる部分があって、静かに心に残りました。一方で夫の中には「ほかも見てみたい」という気持ちが生まれていて——次のステップへの扉が、ここで少し開いた気がします。
② 費用は参考値、考え方を持ち帰る。 完成見学会の費用は坪数・仕様・地域・時期で大きく変わります。「見た家と同じ仕様でいくら」ではなく、「どこにお金をかける考え方か」を学ぶ場として参加すると、見え方が変わります。
次回は、工務店が紹介してくれたファイナンシャルプランナーとの面談について書く予定です。行く前は「工務店の紹介だから都合のいいことを言われるんじゃないか」という疑念があったのですが——その話を正直にお伝えします。
上物予算、皆さんはどのくらいを目安に考えていますか?「こんなに?」と感じたり「意外と?」と思ったり、感覚は人それぞれだろうなと思っています。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
工務店・ハウスメーカーの選び方をまとめ記事で体系的に解説しています。見学会の回り方・比較ポイント・契約前チェックリストまで詳しく解説。
→ 工務店・ハウスメーカーの選び方|家づくり初心者が実際に動いてわかったこと
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- 外構込みの上物総額は約5,200万円——その数字を前に、夫が静かになった
- リビングに予算を集中させ水回りや子ども部屋は実用仕様に抑える——「お金のかけどころを選ぶ」という設計思想を体感できた
- 「ほかのハウスメーカーも見てみたいかも」——見学を重ねることで、比較する目が自然と育つ
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👉 関連記事:28坪の完成見学会レポート|「坪数の感覚」と上物3,500万円のリアル
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- Q. 注文住宅で「上物のコスト」はどこに積み上がる?
- A. 自然素材(漆喰・無垢床)、造作キッチン・洗面、リビングの設計工夫(ピットダウンなど)、外構(門・アプローチ・植栽)、高性能サッシや断熱仕様など、見えにくい部分にコストが積み上がります。「どこにお金をかけるか」を決めると、坪単価より家の質を測る目線が変わります。
- Q. 子ども部屋にはどれくらいコストをかけるべき?
- A. この見学会では「子ども部屋は実用仕様、リビングに予算集中」という設計でした。在室時間や巣立ち後の使い回しを考えると、締めるところを決めると総額がグッと締まります。
- Q. 自然素材の家で予算オーバーしないコツは?
- A. 「全部屋採用」ではなく「リビング・寝室など滞在時間が長い場所に集中」が基本。見積もりの読み方と削れる項目の判断は費用まとめで整理しています。
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