「この土地、いいかもしれない」と思い始めた矢先に「売れました」と言われた。その経験、一度でもしたことがある方には、あの脱力感がわかると思います。
← 注文住宅の土地探し、理想と予算のギャップに直面した話|駅徒歩30分・馴染みのないエリアをどう考えるか
私たちもそれを経験しました。工務店に建物を乗せてシミュレーションしてもらっていた40坪の土地が、ある朝のLINE一本で消えた日のことを今でも覚えています。
この記事では、改めて提案された5件を夫婦で歩き回った記録と、「良い土地ってなんだろう」という問いが少しずつ形になっていく話をお伝えします。
この記事でわかること
- 建蔽率40%・40坪の土地に「総二階」を検討していた矢先に起きたこと
- 「1階16坪」に今のLDKを入れたら何が起きるか——夫の計算と妻の現実論
- 提案された5件を夫婦だけで1日かけて見て回った記録
- 「悪くないね」と言い合いながら、本心が透けて見えた瞬間
- 不動産業者が現地を見ずに紹介していることへの疑問と、夫婦が出した答え
工務店で不動産業者から6〜7件の土地を紹介してもらいましたが、ほぼ全件が駅から徒歩30分前後。原因は初回面談で「駅からの距離」を伝え忘れていたことでした。一方、以前自分たちで見に行った40坪の土地が気になっていることを伝えると、工務店から「建物を乗せて検討できますよ」との返事。今回は、その40坪の土地をめぐる話し合いと、提案物件を自分の足で見て回った1日の記録です。
「売れているみたいです」——不動産業者からのLINEが届いたのは、まさにその土地にどんな家を建てるか、夫婦で話し合っていた最中でした。
建蔽率40%・40坪。1階は16坪しか取れない。じゃあ総二階にする? 2階リビングにする?——そんな話をしていた、あの土地です。話し合うための土台が、突然なくなりました。
落ち込んだまま、その日のうちに提案された5件の土地を夫婦で見て回りました。これは、その1日の記録です。
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登場人物:直感派の妻と、調べ始めたら止まらない自営業40代の夫。都市部で土地から注文住宅を建てる4人家族の記録です。連載のあらましは 第1話 からどうぞ。
「総二階も候補になります」——16坪の1階で暮らせるか
「いいな」と思った土地が売れた日に学んだ、決断のスピードと優先順位の整理。3ヶ月動き続けた経験を体系化したまとめ記事はこちら。
話は少し遡ります。
40坪の土地に建物を乗せられるか、工務店の担当者と話をしたとき、予想していなかった言葉が出てきました。
「建蔽率40%の40坪だと、総二階も候補になりますね」と。
総二階——1階と2階がほぼ同じ面積になる建て方です。構造的に強く、コストも抑えやすいというメリットがあるそうです。ただ、我が家が漠然とイメージしていた間取りは、それとはだいぶ違うものでした。
1階にリビング・ダイニング・キッチンと水回り、そして夫婦の寝室。2階は子ども部屋が2つと、ちょっとした書斎。生活の中心を1階に集めて、2階は子どもの領域——。なんとなく、そういう暮らしを思い描いていたんです。
でも、建蔽率40%で40坪ということは、1階に使える面積は最大で16坪(約53㎡)。
夫がすぐに反応しました。「16坪にLDKと水回りと寝室は入らないよ」と。それだけでなく、「今の借家と同じくらいのLDKを確保しようとしたら、LDK以外のスペースがかなり狭くなるんじゃないか」とも言いました。
数字で見ると16坪。実感が湧かなかったのですが、今の暮らしと比べてみると、その窮屈さが急に見えてきます。今の借家のLDKは約20畳。16坪は約32畳分ですから、今のLDKと同じ広さを確保した時点で残りは12畳分。そこに玄関、階段、トイレ、お風呂、洗面所、収納を全部入れなければならない。1階に詰め込みたいものが多すぎて、16坪では足りない。総二階にすれば延べ床は32坪取れますが、それは1階を広くできるという意味ではありません。
夫の提案——「2階リビングにする?」
夫婦でしばらく話し合いが続きました。
1階に全部入らないなら、何かを2階に上げるしかない。でも何を上げるか。寝室か、リビングか。
夫がこう切り出しました。
2階に寝室ってどうなのかな、いっそのこと、2階をリビングにする?構造的にも強いらしいよ。
夫の頭の中には、20畳以上のLDKへの憧れがありました。2階をまるごとLDKにすれば、その広さが実現できるかもしれない。調べ魔の夫らしく、構造上の利点まですでに把握しています。
私にはすぐに「いいね」とは言えませんでした。
2階リビングということは、毎日の買い物の荷物を2階まで運ぶことになる。重たいものを持って階段を上る毎日。それが何年、何十年と続く。
重たい荷物を持って2階に上がるのは嫌だな。
子どもたちも大きくなったらいずれ出ていく。大きな家は必要ないと思う。もし将来、2階に上がれなくなったら、LDKで寝てもいい。
まあ……それもひとつの考え方だよね。
否定はしなかったけれど、20畳のLDKを手放すのは簡単ではなさそうでした。
💡 総二階のメリットと「1階の狭さ」問題
総二階とは、1階と2階の面積がほぼ同じ建物のことです。構造的に強く、建築コストも抑えやすいと言われています。ただし、建蔽率の制限がある土地では「1階面積の上限は建築面積で決まる」ため、1階に盛り込みたい部屋が多いと窮屈になる場合があります。建蔽率40%・40坪の場合、1階は最大16坪。「何を1階に置き、何を2階に上げるか」が設計上の大きなポイントになります。
LINEが鳴った——「売れているみたいです」
2階リビングの話をしていたときでした。夫のスマホにLINEの通知が届きました。
不動産業者の担当者からでした。
40坪の土地ですが、売れているみたいです……
一瞬、言葉の意味がうまく入ってきませんでした。ついさっきまで「1階16坪で何ができるか」を夫婦で話し合っていた、あの土地。建物を乗せて検討できると言われて、「もう少し考えてみよう」と夫が言った、あの土地。
それが、もうない。
夫がスマホの画面を見たまま、少し止まっていました。私も何も言えませんでした。
📖 土地探しの判断軸まとめ
土地探しで失敗しない7つのコツ、不動産業者4社を3ヶ月回って判明
👩 妻のひとこと 土地探しを始めた当初、「いい土地はネットに出ない」とよく聞いていました。でも実際に4社を3ヶ月回ってわかったのは、「いい土地」より先に「我が家にとって買っても…
あの解体工事は、そういうことだったのか
しばらくして、ふと思い当たることがありました。
前回、あの土地を見に行ったとき(→)、敷地内の建物が解体されている最中でした。「更地にして売るのかな」くらいに思っていたのですが、今になって考えると、あの時点ですでに買い手が決まっていて、解体が始まっていたのかもしれません。
つまり、私たちが「いい土地かも」と思って見に行ったとき、その土地はすでに誰かのものになりかけていた。
夫がぽつりと言いました。
自分たちがいいなと思う土地は、他の人もいいなと思うんだよな……。
そのとおりだと思いました。駅からの距離、建蔽率の問題、「あと5坪あればなぁ」——いろいろ引っかかるところはあった。でも、それでも気になっていた。他の人にとっても同じだったということです。
迷っている間に、決断した人がいた。
悔しいという気持ちよりも、「これが土地探しなんだ」という実感が、じわじわと広がっていきました。
気になる土地があっても、自分たちが悩んでいる間に他の買い手が決断することは珍しくありません。特に条件の良い土地ほど動きが速い。「もう少し考えてから」と思っている間に機会が消えてしまうことがある——それを身をもって経験しました。「完璧な判断」を待つより、「買ってもいいかどうか」の基準をあらかじめ持っておくことが大切だと感じました。
それでも、提案された物件を見に行くことにした
📋 提案された5件の概要(記事内の第一印象・決めなかった理由)
| 順 | 第一印象/特徴 | 決めなかった主因 |
|---|---|---|
| 1件目 | 「車で6分」の表示 | 表示に騙された(実際は徒歩で遠い/アクセス感覚のギャップ) |
| 2件目 | 「悪くないね」の土地 | 一見良かったが裏側に課題(記事内で「裏側」に言及) |
| 3件目 | バス利用前提の立地 | 徒歩圏ではなくバス前提で、暮らし方と合わなかった |
| 4件目 | 公園前で抜け感あり | 公園前の窓に電線が走っており、景色が想像と違った |
| 5件目 | 「景色がよい」の意味 | 現地で私が電話をかけ、地場業者への相談に切り替えた |
※ 各件の詳細は以下の見出し(1件目〜5件目)で順に解説しています。
40坪の土地が売れたと知って、気持ちは沈んでいました。
でも、不動産業者から提案してもらった物件がまだ残っています。前回の打ち合わせで紹介された6〜7件のうち、駅距離が極端に遠いものを除いた5件——いずれも駅から徒歩30分前後の土地たち。担当者が「行く前から決めつけないでください」と言ってくれた、あの物件です。
紹介してもらった以上、きちんと見ないと失礼だ——という気持ちもありました。気持ちが前向きだったとは言えません。ただ、朝から総二階の話し合いをして、LINEで土地が売れたと知って、それでも「とにかく動こう」と夫婦で決めて、その日のうちに5件を回ることにしました。
提案された5件を、夫婦で1日かけて回った
1件目——「車で6分」の表示に騙された
最寄り駅は、以前から「住んでみたい」と思っていた駅でした。駅の近くを車で通ったとき、カーナビに「目的地まで6分」と表示されて、「意外と近いのかな」と少し気持ちが上がりました。
でも実際に走り始めると、なかなか着かない。信号で止まり、住宅街の細い道を曲がり、また曲がり。6分では着きませんでした。
車でこれなら、歩いたらどうなるか。雨の日に、荷物を持って、この距離を通うのか。頭の中で想像してみて、気持ちが折れる自分がいました。
地縁のない場所で、駅まで徒歩30分。数字で見るのと、実際にその場に立つのでは、重さが全然違いました。
2件目——「悪くないね」の裏側
2件目に向かいました。
ここは1件目より雰囲気が良く、周辺の道も広くて、「悪くないかもね」と夫婦で言い合っていました。
でも、長く一緒にいると、言葉の裏にある温度がわかります。
夫の「悪くないね」は、「ここがいい」ではなかった。私の「悪くないね」も、本心からそう思って言ったわけではなかった。お互いに、相手に合わせて言葉を選んでいる感覚がありました。
「悪くないところに住む」ということで、いいんだろうか。
家は何十年も暮らす場所です。「悪くない」で決めて、10年後、20年後に後悔しないか。そう思うと、簡単に「ここにしよう」とは言えませんでした。
3件目——バスが前提の立地
3件目は公園のすぐそばで、雰囲気はよい場所でした。近くでは綺麗な建売住宅が建築中で、住環境もよさそうに見えます。
ただ、最寄り駅までバスでの移動が前提の立地でした。バスの本数や最終便の時間を考えると、通勤や子どもたちの帰宅時間に合わせるのは現実的ではない。冷静に考えると、ここに住んだ場合、これまでの生活よりも通勤時間が往復で約1時間増える。毎日のことです。それを何年も続けると思うと、どうしても前向きになれませんでした。「到底、毎日ここから通うのは難しい」と、夫婦の意見が一致しました。雰囲気や住環境だけならよかっただけに、惜しいという気持ちはありました。
4件目に向かう途中で——「自分たちが悪い」
4件目に向かう車の中で、夫婦の会話が変わりました。
「駅までの距離を希望に入れなかった自分たちが悪いよね」と。
誰かを責めているわけではありません。ただ、初回面談で伝え忘れたことが、ここに来てはっきりと結果に出ている。提案された物件はどれも「抜け感」は意識してくれていた。担当者は、聞いた条件にはきちんと応えてくれていた。条件を伝えなかった側の問題だった、と改めて感じました。
4件目——公園の前の電線と、ひとつの疑問
4件目に着きました。「目の前に公園があり、抜け感がある」と聞いていた物件です。
たしかに公園はありました。でも、前面道路から見上げると、電柱が並び、電線が何本も走っている。とても「景色がよい」とは言えない状態でした。
ここで、ひとつの疑問が頭をもたげてきました。
私たちは今日、朝から5件の土地を見て回っている。1日かけて、自分たちの足で。でも、この物件を紹介してくれた不動産業者は、現地を見ていない。前回の打ち合わせでも「現地は確認していないので分からない」と言っていた。
素人ながら、思いました。紹介する側が現地を見ないまま「景色がいい」「抜け感がある」と説明するのは、どうなんだろう、と。
業務として何十件もの物件を一つひとつ見て回ることが難しいのは理解できます。でも、私たちは実際に足を運んで見ている。その差が、今日1日で繰り返し目の前に現れていました。
「地場の不動産業者にも相談すべきでは」——でも、不義理になるのか
4件を見終えて、車に戻ったところで、夫婦の会話が変わりました。
「地場の不動産業者にもお願いした方がいいんじゃないか」と。
ネット上で公開されている情報だけでは、自分たちが納得できるような土地には出会えないのかもしれない。地元に強い業者なら、ネットに出る前の情報を持っている可能性がある。
ただ、今の不動産業者は工務店が紹介してくれた方です。工務店の担当者は、土地探しからずっと一緒に動いてくれている。その工務店の顔で紹介された業者を飛び越えて、別の業者に相談する。それは、工務店との関係を気まずくしないだろうか——その遠慮が、夫婦の間にありました。
でも同時に、「遠慮して動かないまま、また土地が売れていく」という怖さもありました。40坪の土地が売れた記憶が、まだ新しかったからです。
答えは出ないまま、最後の5件目に向かいました。もう見に行く意味があるのかわからなくなっていました。
5件目——「景色がよい」の意味
最後の5件目に着きました。
この土地は「抜けていて景色がよい」と説明を受けていた物件です。
実際に立ってみると、たしかに視線は遠くまで通りました。ただ、見えるのは遠くの建物だけ。空が広いわけでも、緑があるわけでもない。私たちがイメージしていた「景色がよい」とは、だいぶ違うものでした。
5件、回り終えました。朝から夫婦で車を走らせて、1件ずつ現地を歩いて、その場の空気を確かめて。結果として、「ここに住みたい」と思えた場所は、1件もありませんでした。
5件目の現地で、私が電話をかけた
5件目の土地の前に立ったまま、私はスマホを取り出しました。
以前、知人から「地元の不動産に強い業者がある」と聞いたことがありました。そのときは「いつか相談するかも」くらいに思っていたのですが、今日1日、5件を回って感じたことが、その「いつか」を「今」に変えました。
工務店との関係が気まずくなるかもしれない、という気持ちは消えていませんでした。でも、遠慮して動かなかった結果、40坪の土地は売れた。「悪くないね」と無理に言い合う土地探しを、このまま続けるのか。工務店との関係は大事です。でも、この土地に何十年も住むのは私たちなんだ——そう思ったとき、気持ちが決まりました。
電話をかけました。
「土地を探しているんですが、今から伺ってもいいですか」と。
横で聞いていた夫は、何も言いませんでした。止めなかった。それが、夫の答えだったと思います。
土地探しの全記録をまとめ記事で体系的に解説しています。業者の選び方・土地を見るポイント・失敗しない判断基準まで詳しく解説。
→ 土地探しの全記録|家づくり初心者が学んだ失敗しないための完全ガイド
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👉 土地探しまとめ|3ヶ月かけて学んだ条件整理と業者選びのコツ
👉 関連記事:28坪の完成見学会レポート|「坪数の感覚」と上物3,500万円のリアル
次回予告
次回は、地場の不動産業者に飛び込みで相談した日。ファイルの山と若い店長——「地元業者ならでは」の動き方が見えた話です。
気になっていた40坪の土地が売れた瞬間、「動くべきときに動かないと間に合わない」と実感しました。
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💬 よくある質問
- Q. 「いいな」と思った土地が売れてしまうまでの早さって、どれくらい?
- A. 都市部・人気エリアは数日〜1週間で動くことも珍しくありません。我が家も40坪の土地を「もう少し考えよう」と保留している間に売れてしまいました。
- Q. 工務店紹介の業者以外に頼むのは不義理?
- A. 業界的には全く問題ありません。複数業者を動かす方が物件情報の網が広がります。判断軸は土地探しまとめで整理しています。
- Q. 2階リビングは選択肢として検討すべき?
- A. 1階の床面積が16坪程度(総二階で延床32坪相当)の家なら、2階リビングで明るさと広さを確保できる場合があります。ただし高齢期の動線や階段の負担も含めた長期視点の判断が必要です。間取りの判断軸は間取りチェックリスト98項目にまとめています。
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