土地探しで失敗しない7つのコツ|4社3ヶ月の体験談まとめ
👩 妻のひとこと
土地探しが3ヶ月、まだ決まらない。「やっているのに進まない」のは、本当に消耗します。この日の私は、夫に塩対応されて少し寂しくなりました。でも、夜帰宅した夫のズボンに付いていた小さな植物の種が——夫が、私の見えないところでも家のことを考えていた証拠でした。家づくりは夫婦の歩みが少しずつズレながら、それでも同じ方向を向いている、ということに気づいた一日です。
前回のあらすじ
縁側から南の庭を眺める暮らし——そんな憧れが詰まった60坪超の土地を、夫婦で見に行きました。「同日に見学希望者がいます」という知らせは営業トークかもしれないと疑いながら、一本道の突き当たりに現れた森のような緑に、思わず足が止まりました。
現地には工務店の担当者も来ていました。敷地を確認しながらひと言——「擁壁が気になります」。水抜き穴のない古い擁壁に土圧がかかる構造で、やり直し費用を含めると予算を1,000万円以上超えることがわかりました。
前に進むために諦める、という判断をした前回でした。今回は、その後の土地探しの展開です。
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登場人物:直感派の妻と、調べ始めたら止まらない自営業40代の夫。都市部で土地から注文住宅を建てる4人家族の記録です。連載のあらましは 第1話 からどうぞ。
前回のあと——手元にある候補は、たったひとつ
前回、擁壁の安全性に問題があった土地を見送ってから、わが家の土地探しは目に見えて停滞していました。
手元に残った候補は、2社目の担当者が「そのうち紹介できるかもしれません」と言ってくれた、一件だけ。それも確約ではありません。「かもしれない」という曖昧な一言に、どれだけの重みを置いていいのか、正直よくわからないままでいます。
夫も私も、毎朝スマホで不動産情報サイトを開いています。SUUMO、ランディ、アットホーム——。新着物件の通知を待って、出てきたら中身を見て、条件に合わないと静かに閉じる。そんな日々が何週間も続いていました。
家づくりが動き始めてから半年、土地探しを本格化させてから3ヶ月。いちばん大切な「どこに建てるか」が、いちばん決まらない。このもどかしさは、動いた人にしかわからない種類のものだと思います。
揺らぎ始めた、夫の言葉
ある日の食後、夫がぽつりと言いました。
やるだけやったら、自然と条件も下がってきて、物件も決められるのかな……
別の日には、こうも言っていました。
いっそのこと、土地の予算を上げちゃうか。
どちらも、本気なのか迷い言なのか、判別のつかない言葉でした。ただ、夫がそこまで口にするほど、停滞が重くのしかかっていたのは確かです。
でも、私は知っています。夫は、家のしつらえをとても大切にしたいタイプです。断熱性能、素材、照明、家具——これらへのこだわりは、家づくりの大きな原動力でもあります。そういう人が「土地の予算を上げる」と言ったところで、実際に予算を動かせば、結局どこかにしわ寄せがいきます。土地代を増やせば、建物の予算が減る。建物の予算を削れば、こだわりの部分を妥協せざるを得なくなる。そして、家族の暮らしの満足度も下がる。
予算を上げる話は、聞いた直後から、間違っているとわかる選択肢でした。
でも、それを口に出して否定するタイミングでもない気がして、私は「そうだねぇ」と曖昧に返すにとどめました。
夫婦の間を流れる、見えない気遣い
この停滞期に入ってから、夫婦の会話のリズムが少し変わってきました。
私が「この土地、どう思う?」と物件を提案しても、夫から色よい返事が返ってくることは、ほとんどありません。「うーん」「微妙かな」「見てみないとわからないけど」——そんな反応ばかりです。
一緒に現地を見に行っても、行く前から、薄々ダメなのが分かっているような雰囲気が、車内にあります。着いて、降りて、一周して、車に戻って——結論は出ています。帰り道の会話で、確認するだけ。
面白いのは、夫が現地で自分から先に「これは違う」と言わないようになったことです。以前は夫がすぐに「これはないね」と結論を言い、私がそれに同意する流れでした。でも最近は、夫が「どう思った?」と先に私に感想を聞いてきます。
たぶん、気を遣ってくれているのだと思います。自分から先にNGを出すと、そこで話が終わってしまう。私がまだ何か感じているかもしれないから、先に聞いてくれている。
ありがたい配慮です。でも、その配慮がまた、停滞を長引かせる原因にもなっている気がしました。
一人で電話してみた——気になっていた、60坪の土地
そんなある日、私は前々から気になっていた土地のことを思い出しました。
物件情報サイトで何度も見かけていた土地です。広さ60坪(※前回ep19で見送った南向き60坪超の土地とは別の物件です)。予算は少しオーバーするけれど、中学の学区が今と同じ——子どもの進学先が変わらないのは、魅力のひとつでした。
気になっていたのに、なぜ今まで電話しなかったのか。理由のひとつは、Googleの航空写真で見たとき、建物の奥に擁壁らしきものが写っていたからです。前回の見送りを経験した今、擁壁と聞くだけで身構える反射神経が、夫婦に染みついてしまっていました。
でも、この日、思い立ちました。とりあえず一歩だけでも動こう、と。夫は仕事で家にいません。私は一人で、物件情報サイトに載っていた不動産業者(5社目)の電話番号にかけてみました。
「奥の擁壁は、4.5メートルくらいある」
電話に出たのは、声の感じから若そうな男性の担当者でした。丁寧に物件の概要を確認してくれた後、私は気になっていたことを聞いてみました。
担当者の答えは、想像を超えていました。
4.5メートル。
前回見送った土地の擁壁は、水抜き穴がなく崩壊リスクが懸念される、という話でした。今度は高さそのものが、4.5メートル。その事実だけで、頭の中で警報が鳴り始めました。
担当者は続けます。擁壁の詳細な調査はまだ実施していないので、具体的な状態は今の段階では分からない、と。一般論として、「がけ条例」と呼ばれる建築基準法上のルールがあり、擁壁(あるいはがけ)の高さが一定以上ある場合、その高さの2倍の距離を離して建物を建てるか、安全な擁壁を新設する必要があるのだそうです。「4.5メートルなら9メートル離すことになる。それだと希望するような家は建たないでしょう」と、担当者は丁寧に説明してくれました。
「距離を離さずに建てる場合、敷地内に新たな擁壁を築造することになります。1000万円程度はかかると思います」
1000万円。
予算を少しオーバーしている土地に、さらに1000万円の擁壁工事を上乗せする——もう、検討の余地がない金額です。「近々、詳細調査を実施するので、結果が出たら改めてご連絡しましょうか?」という担当者の申し出を、私は「一旦、大丈夫です」と断りました。
また、ダメだった。
電話を切ろうとした、そのときです。
電話を切る間際、思いがけない紹介
「あの、土地をお探しでいらっしゃいますか?」
担当者の一言で、電話が繋がり続けました。
「はい、探しています」
私は反射的に、条件を伝えていました。予算、希望エリア、学区。電話口の向こうで、担当者が少し考える気配がして、それから話してくれました。
「実は、最寄り駅が同じで、条件が近い物件があるんです。知り合いの不動産業者から『売ってほしい』と頼まれている物件で——」
そんなことがあるんだ、と思いました。業者同士で物件を融通し合うような仕組みがあるとは、正直知りませんでした。でも、聞いた条件は悪くありませんでした。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 広さ | 33坪 |
| 建蔽率 | 60% |
| 最寄り駅 | 徒歩10分 |
| 向き | 北向き |
| 周辺 | 道路を挟んだ北側に神社 |
| 予算 | わが家の予算範囲内 |
予算内、駅徒歩10分。学区は小学校も中学も今とは違いますが、停滞期のわが家にとっては、久しぶりに「悪くないかもしれない」と思える物件でした。
実は日本の注文住宅の平均延床面積は約33〜38坪(住宅金融支援機構「フラット35利用者調査」等)。つまり「33坪の家」が全国平均の水準です。土地33坪で建蔽率60%なら、1階の建築面積は最大19.8坪、2階建てなら延床面積はさらに広くとれます。国土交通省の「住生活基本計画」における4人家族の都市居住型・誘導居住面積水準は約27坪(95㎡)なので、33坪の土地に建てる家は、4人家族が余裕をもって暮らせる基準を十分に満たすことになります。都市部では30坪未満の土地も珍しくない中、33坪・駅徒歩10分・予算内という条件は、決して悪い条件ではありませんでした。
夫に電話——「狭いね」の塩対応
電話を切った私は、すぐに夫に電話をかけました。
さっき、気になってた土地のことで不動産屋さんに電話したんだけど、別の物件を紹介してもらえて——
あ、ごめん、今ちょっと。後で。
なんだよ、と思いました。せっかく、一人で勇気を出して電話して、思いがけず新しい情報ももらったのに。
仕方なく、詳細はSMSで送ることにしました。33坪、建蔽率60%、駅徒歩10分、北向き、道路を挟んだ神社、予算内——端的にまとめて送信。
返信は、しばらくしてから、短いメッセージで届きました。
狭いね。
問い合わせてくれてありがとう。
その二行だけ。
気を遣ってくれているのは、分かります。「ありがとう」の一言も、夫なりの感謝であることは伝わります。
でも、私だけが一生懸命になっている気がして、少し寂しくなりました。こちらは今日、停滞を打破しようと思って、一人で電話までしたのに。
そうでないことは、頭では分かっているつもりでした。
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夜9時、ズボンに植物をつけて帰宅した夫
その日の夜9時頃、夫が帰宅しました。
玄関で出迎えた私は、夫のズボンに植物の種のようなものがたくさん付いているのに気づきました。いわゆる「くっつき草」。草むらを歩かないと、こんなにはつきません。
どうしたの、それ?
夫は、少しバツが悪そうに、でも淡々と答えました。
現地、見てきた。
——え、と思わず声が出ました。
仕事の帰り道に、夫は一人で、今日紹介された物件の現地まで足を運んでいたのです。すでに日は落ちて、暗くなった時間。それでも、敷地の周辺を歩いて、隣接地や周りの家の様子を見てきた、と。
悪くなかったよ。
夫は続けました。隣の土地も同じくらいの広さだったけれど、思ったほど小さく感じなかった。3階建てにしている建物もあったから、参考になった。1年以上売れ残っているらしいから、焦って決める必要はなさそう。まずは2社目からの紹介を待って、そのうえで候補に入れておいてもいいんじゃないか。
夫の口調は、いつも通りでした。塩対応のSMSを打った人と、同じ人が話しているとは思えないくらい、落ち着いた説明でした。
私は、ズボンのくっつき草を見ながら、少しだけ、心が温かくなりました。
見えないところで、動いていた
夫婦というのは、不思議なものです。
昼間、電話口の向こうの夫は、確かに「狭いね」と塩対応でした。それは事実です。でも、その夫が、仕事の後、一人で現地まで歩いて、暗い住宅街をくっつき草まみれになりながら確認してきていた——これも、同じ人の同じ一日の、事実でした。
「私だけが一生懸命」と感じていたのは、私が見えていなかっただけだったのかもしれません。
夫は夫で、たぶん、ずっと気にしていました。仕事の合間も、通勤電車の中でも、土地のことを考えていたのだと思います。ただ、同僚の前では土地の話はしたくなくて、SMSも短くしか返せなくて、でも仕事が終わったら自分の足で見に行った。それが夫のやり方でした。
私のやり方は、私のやり方。夫のやり方は、夫のやり方。形は違うけれど、二人とも、家のことを考え続けている——そのことを、くっつき草が教えてくれた気がしました。
次は、二人で昼間に行ってみようと思う
1年以上売れ残っている土地ということは、それなりに理由があるのかもしれません。北向きで、道を挟んで神社があって、広さは33坪。決して満点の条件ではないけれど、駅徒歩10分、予算内。そして何より、夫が「悪くなかった」と言った土地。
週末、今度は二人で、昼間に現地を見に行ってみようと思っています。夫が夜に一人で歩いた道を、明るい時間に並んで歩く。隣の土地の広さも、神社の気配も、北向きの日当たりも、昼間なら昼間で見えるものがあるはず。
2社目からの「紹介できるかもしれない」物件も、まだ待っています。焦らず、でも手は止めずに、もう少し動いてみます。
- 前回の土地を見送ったあと、手元に残った候補は「紹介できるかもしれない」と言われた1件だけ
- 停滞期の夫の揺らぎと、夫婦の間に流れ始めた気遣いの循環が、かえって前進を止めていた
- 気になっていた60坪の土地に一人で電話——擁壁4.5メートル、1000万円の工事が必要と判明
- 電話を切る間際に、同じ駅の別の物件を紹介された(33坪・建蔽率60%・駅徒歩10分・予算内。学区は今と異なる)
- 夜9時、夫はズボンにくっつき草をつけて帰宅した。SMSでは塩対応だった夫が、一人で現地を見に行っていた
- 次の週末、二人で昼間に現地を見に行く予定
土地探しは、まだ続いています。焦らず、でも動くことをやめずに。次回、現地を見に行った報告ができればと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
さっき、気になってた土地のことで不動産屋さんに電話したんだけど、別の物件を紹介してもらえて——
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💬 よくある質問
- Q. 土地探しが長期化したとき、夫婦のモチベーションはどう保てばいいですか?
- A. 「動いている」事実を共有することが大切です。我が家は1人で電話したり、現地を歩いたりという小さな行動を、お互いが知らなくても続けていました。塩対応に見えても相手が動いているケースもあるので、結果報告ではなく「行動した事実」を伝え合うのがおすすめです。
- Q. 擁壁がある土地で、補強・やり直し費用はどれくらい見ておけばいいですか?
- A. 我が家のケースでは、第19話で水抜き穴のない古い擁壁の土地を、第20話で4.5メートルの擁壁付きの土地を検討しました。いずれも工務店経由で確認した補強・やり直し費用の概算は1,000万円規模で、土地価格と合わせると総予算を大きく押し上げる金額でした。高さ2m超の擁壁は「がけ条例」(建築基準法)の対象になり、距離規制や擁壁の安全性確認が必要です。検査済証・水抜き穴の有無・築年数を不動産業者に確認し、補強工事の概算を専門家にあらかじめ見積もってもらうと、土地価格と総予算のギャップに気づきやすくなります。
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- 停滞期こそ小さく動く:妻が一人で不動産会社に電話するような「小さな行動」が、土地探しの流れを変えるきっかけになる
- 擁壁リスクの見方:4.5mの擁壁はがけ条例の対象となり、建物の離隔距離か1000万円規模の擁壁新設工事が必要になる
- 断った後もつながりを保つ:物件をNGにした後も電話を切らずに話を続けると、別の新規物件を紹介してもらえることがある
擁壁の高さを聞いた瞬間、頭の中で金額が積み上がっていきました。それでも電話を切らずに話を続けていたことが、担当者からの思いがけない別物件紹介につながりました。停滞期に動くことをやめない——この話が教えてくれる、いちばん大切なことだと思っています。
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